Awichが語る、ジェイ・Zとの邂逅、コミュニティの底上げと自身の成長、フジロック出演
コーチェラ初出演で掴んだ手応え
ー時系列を遡って、今年4月に出演されたコーチェラの話についても聞かせてください。今回は88risingが主催する特別ステージ「88rising Futures」にフィーチャーされるという形での出演でした。そこに至るまでの経緯はどのようなものでしたか。 Awich 88risingの代表であるショーン(・ミヤシロ)とは、彼がけっこう前に日本に来ていた時に一度挨拶をしたことがあったんです。だけど時間が空いて、数年前にショーンから連絡が来て、それから色々話していました。ショーンの苗字である「ミヤシロ」は沖縄に多い苗字なんです。だから「沖縄でしょう?」って聞いたら、ファミリーのルーツが沖縄だというので、そういう話題で盛り上がったんです。「RASEN in OKINAWA」がめっちゃホットだって連絡をくれたこともありました。そういうやり取りを続けながら、「曲をやろう」って話も出ていたんですが、スケジュールが合わなくて。一度、私がLAに行った時に「会おう」ということになり、その時に「コーチェラはどうだ」って話をもらって「まじ?」って。出ますよね、そりゃ。そこから、88risingが手掛けるフェスであるHead In The Cloudsにも「出てよ」って言ってくれたりして。 ー実際に踏んだコーチェラのステージや現地での雰囲気はいかがでしたか。 Awich 本当にベイビーステップをちゃんと踏めているな、という感覚がありました。たとえば、YOASOBIや新しい学校のリーダーズは、「88rising Futures」以外にも自分たちの単独パフォーマンス枠があるんですよ。実際に(ステージを)観たけど、そこでもマジでかましてるんですよ。「彼らもその枠をもらえる前には小さい枠をもらって、ちゃんとそれをこなしてきて、ここまでたどり着いているんだな」っていうお手本を見せてくれた。なので私も、今回、コーチェラの中の「88rising Futures」の一枠という機会をいただいて、しかも(客演の)みんなを連れてきてもいいっていうめっちゃ恵まれているステップにいる。いきなり大きな舞台に立ったわけではないけど、コーチェラはコーチェラだし、瞬間的なライブかもしれないけど、ちゃんとそれを感じることができる。自分のことを120%で見せることができる機会をいただけてる……ということを感じましたね。安心して地に足をつけてできる段階のライブでした。もちろん、めっちゃ大変だったし緊張もしたけど、すごく勉強になりました。「こういう感じか……だったらもう次は単独の枠くれよ! フライヤーに名前載せてくれよ!」みたいな感じですね(笑)。今はもう怖くない。 ー限られた時間の中でのライブでしたが、JP THE WAVYさん、そして、「Bad Bitch 美学 Remix」に参加したNENEさん、LANAさん、MaRIさん、そしてゆりやんレトリィバァさんを引き連れたステージでした。Awich一人でコーチェラでパフォーマンスする、という選択肢もあったかと思うのですが、今回、こうして仲間たちとステージに立った、ということも意義深く感じました。 Awich やっぱり私は、『Queendom』(2022年)を作った時ぐらいから、みんなのためにこのコミュニティの底上げをしたいなという気持ちがあって。自分がかっこよくなるとか、人気が出ること以上に、時代を作るとか新しい考え方を作るとか、よりアイコニックなことをやりたいんですよね。だからそのために“女性”のコミュニティ、“沖縄”のコミュニティを持ち上げる作業をしています。もちろん1人でも行こうと思えば行けると思うし、「裸一貫!」みたいなものも好きなんですけど、そもそもの考え方が変わったのは『Queendom』ぐらいからですね。引っ張るというよりは、底上げをしないと、と思っていて。1人でやったら絶対消えるのも早いし、楽しくないんですよね、多分。そのつもりで全部のことをやっています。 もともとは、そんなことおこがましくてできないと思っていたし、むしろ、私は友達がいない方なので一匹狼な感じなんです。けど、「GILA GILA」の歌詞でも言っているようにYZEERから「姐さんがやらないと誰がやるんですか」って言われた時ぐらいから、「もう、人生のそういうフェーズに入ってるんだ」って思ったんです。色んな経験を経て、私も成長しないといけない時なんだなって思って。「じゃあ、みんな一緒にいこう」みたいな感じの役目を引き受けることにしたし、自分の人生のポイントとしてどっちがいいか考えた時に、1人でずば抜けて別格、みたいな存在になるよりは、みんなが一緒に「これが時代だ」みたい場面を作った方がいいし、死ぬ時もそれを思い出して「みんなでやべえことしたわ」「思い出がいっぱいある」って思える方が絶対楽しいなと思います。 ーコーチェラで観た、印象に残っているステージはありますか? Awich (ヘッドライナーだった)ドージャ・キャットのステージを観たんですけど、やばかったですね。彼女の歌唱スキルとダンススキルもすごかったし、後から演出やコンセプトについて調べたら、筋肉と骨と髪の毛がテーマだったらしいんですよ。「人間の原点を表現したかったのかな」と思いながら、私はめっちゃくらいました。どちらかというと、ステージのパフォーマンスにおいて私は根底にあるコンセプトみたいなものを決める係で、全体の演出だとか、レーザーや映像についてはそれぞれの巨匠が考えてくれるんです。だから、その人たちの助けがないと絶対にパフォーマンスはできない。私の根底にあるものは、彼らが聞いてくれるから、むしろ「何をどういうテーマで表現したいか来週までに考えてきて」って宿題みたいに言われる(笑)。でも、毎日そういうことを考えているので、だんだん考えることが簡単になってきてはいますね。一貫性を持って自分のストーリーやナラティブを伝える、みたいなことが固まってきているなと感じています。 ーコーチェラとは別に、LAのダウンタウンで『PLANET A』と題してAwichさんが主催する単独のイベントも開催されていました。その行動力もすごいし、どのような狙いでイベントを開催したのでしょうか。 Awich 「イケてる日本人のアーティストが来てるぜ」っていうのをしっかりLAの人たちに見せたいと思ったのと、コーチェラという大きなステージとは別に、現地にいるファンの方がしっかりAwichを観に来ることができる場所を作りたかったんです。あとは、ストリートのイケてる奴らが集まる場所みたいなのを作りたくて、HABUSHもたくさん振る舞うという計画で。LAのBABYLON、Sister Midnight、Mr.Brothers Cut Club、PIZZANISTA!など、現地に根ざして活動しているブランドの方々に協力していただいて作ることができたパーティーだから、それも含めて意味のある場所になりましたね。めっちゃ楽しかったです。もう、ベロベロ(笑)。 ー実際に、どんなオーディエンスが集まったのでしょうか。 Awich びっくりしたんですけど、LAにもめっちゃファンがいたんですよ。みんな、すごく歌ってくれて。かっこいいアーティストもいっぱい来てくれたし、ローラや(堀米)雄斗、ジャクソン・ワンたちも遊びに来てくれたんですよ。