Awichが語る、ジェイ・Zとの邂逅、コミュニティの底上げと自身の成長、フジロック出演
ワンオクTakaの言葉とツアー総括
ーツアーの最終日(5月23日)、Zepp Haneda公演の時も客席に向かって「かわいいとかどうでもいいんだよ」って言ってましたよね。 Awich ずっと「かわいい」って言ってくる奴がいたから、「今、それはどうでもいいから! 黙れ!」って(笑)。それは冗談で、もちろんそれが大事なのも知っている。ヘアメイクや衣装をやってくれている人たちがいるから助かるし、みんなの目を楽しませるように努力もしている。これはONE OK ROCKのTaka君が言ってたことなんですけど、「アーティストはみんなの心にリーチしようとしている。でも、直接みんなの心にたどり着くことは難しいから、五感で感じさせるようにするんだ。そうしたら心にも届くから」と。だから、私もいつも衣装とかヘアメイクとか筋トレとか、自分を見て「いいなあ」って思われるような努力をしないといけないと思ったんですよね。Taka君は料理にもこだわりがあって、オーガニック食品を扱うスーパー(15/e organic)を経営しているんです。Taka君は音楽以外のところでも、視覚や味覚を満たせるようなプロジェクトをやっているんですよね。最終的には「村とかも作りたい」って言ってて、「私も村、作りたいです」って話しをしていて(笑) ーアーティストとしては、“気持ち”と“音楽”に魅力や価値観をプラスして伝えることが大切、ということでしょうか。 Awich Taka君の言葉には「なるほどな」って思いましたね。私はみんなの心に音楽を届けたいんだけど、そのためには見た目も含めて準備していくことも大事なんだなって。だけど、ステージに上がる時にはそれを捨てるぐらいの勢いで行くっていう心意気とエネルギーがないと本当に伝わらない。自分がどう見られているかをずっと気にしながらライブしても、「まあ、よかったよ」ぐらいにしか伝わらないんです。でも、全て捨てて噛み付くくらいの勢いで挑んだら、「何なんだ、これは……!」くらいに伝わる。今回のツアーでは、それを学びました。 ーオーディエンスにも、Awichさんの想いが伝わっているな、という実感はありましたか? Awich ありました。そして、それはもちろん大事ですし、お客さんのリアクションを感じ取ろうという気持ちはもちろんあるんですけど、そこにあんまり自分を左右されないように、ということも心がけています。それはコロナ禍の公演で学びました。武道館公演(「Awich Welcome to the Queendom at 日本武道館」/2022年3月)もそうでしたが、その時ってお客さんはマスクを着けて、拍手しかできない状態じゃないですか。歓声すら口に出せなかったし、「めっちゃ修行だな」ってずっと思っていましたね。でも、あの時期を乗り越えて着いてきてくれた人たちもいる。それに、あの時期のライブではお客さんの反応やアクションに頼ることもできないし、お客さんに伝わっていると信じるしかない。自分からリアクションを求めにいくだけじゃダメなんですよね。お客さんがくれるエネルギーはボーナスだと思った方がいい。それを絶対にもらえるものだと思って臨んでいたら、もらえなかった場合に、「何でくれないの!」となってしまうから。恋愛と一緒で、「自分は自分で大丈夫だけど、もし側にいてくれたらめっちゃ嬉しい」っていう関係がいいのかなと思うんですよね。何事も求めすぎると切なくなるから、(自分からは)求めないようにしています。 ー実体験から得た教訓ですね。ツアーが終わった後の達成感はどうですか? Awich めっちゃあります。ライブごとに毎回しっかり達成感があるから、怒涛のスケジュールなのに眠れないんです。朝までみんなで飲み明かすんですよ(笑)。まず、乾杯に次ぐ乾杯からカラオケが始まって、自分の曲の「GILA GILA」の後にMONGOL800とか、それからBEGINの「島人ぬ宝」を歌って……ずっと歌ってます。まじで意味が分かんないですもん、本当に(笑)。でも、人間のアクティビティにはエネルギーを吸い取られるアクティビティと、エネルギーをもらうアクティビティがあると思っていて、吸い取られる方には「ストレスを溜める」とか「怒ること」とかがあって、エネルギーをもらう方には「新しい学びを得る」とか「喜ぶ」とかがある。私はどんなに忙しくても後者のアクティビティの方が多いから、どんどんエネルギーが溢れてくるんですよね。ライブでは毎回新しい学びがあるし、いいライブができて心から喜んでる自分がいる。目に見える行動が同じだとしても、学びを感じ取れる人は多分余裕で「まだいける」って思うし、その行動にストレスや苦痛を感じている人は「やめたい」「退屈だな」と思うだろうし。私は毎回、学びや喜びを得ているから、エネルギーが消耗するどころか、次から次へと溢れ出てくる。 ーZepp Hanedaのライブの時、MCでジェイ・Zやローリン・ヒル、そしてMFドゥームらのリリースで知られるRhymesayersに所属しているプア・ライチャス・ティーチャーズ/ワイズ・インテリジェントの名前を出して「ヒップホップに敬意を示そう」とオーディエンスに呼びかけている姿がすごく印象的だったんです。ここまで直接的にヒップホップのルーツも含め、わざわざメッセージを発信している姿は珍しいのでは、と。 Awich ワイズ・インテリジェントとは20年ぐらい前から知り合いなんです。結婚している時に、旦那がファイヴ・パーセンターズにいたから、そのつながりでSNSでフォローをしたのがきっかけで、一緒に作った曲もあるんです。でも、そのMCは前もって考えていたものではなくて、その時に出てきたんです。ツアーの福岡公演以降は、細かいMCも考えていなくて、その時に出てきた言葉を発していたので。ライブ中に「Link Up」を歌っていて“Thanks to Hip-hop”という歌詞を歌い終わった時に、その歌詞の意味について説明しようと思ったらそのメッセージが出てきたのかな、と思います。