「バカげてると思われるかもしれないけど…」難病を克服してプロテストに合格した女子ゴルファー、平塚新夢が信じたもの
■「日々の幸せを見つけるのが下手かもしれない」 話を聞いてみると、少しずつ平塚新夢という選手のどこか達観した人物像をうかがうことが出来る。これは難病を患う前からの、もっと人格のコアな部分から発しているものだ。 「私、日々の幸せを見つけるのが下手かもしれない。 ケーキの上にシュークリームが乗ってたデザートがあって、友達が美味しそうって言ったんですけど、そう? 想像通りのシュークリームの味じゃない?と私が言っちゃって。 そういうことじゃないんだよ、って言われたんですけど(笑)。どうせ同じ味でしょって、思っちゃうんですよ」 冷めているわけではないのだが、どこか先が見えるような、悟っているような感覚がある。子供の頃から、地元の新聞などに取材されて、将来の夢はなんですか?と聞かれると、「プロゴルファーになりたいです」というのを望んで聞いてるな、それ以外の答えは求められていないな、と感じながら答えていたという。 アマチュア優勝という快挙を果たした2017年の「静ヒルズレディース 森ビルカップ」でも、試合後は優勝して嬉しいという高揚感があまり感じられなかった。プロの試合で勝ち、夢がかなった瞬間でもあったはずだが、ほんの少しどこかに心ここにあらずといった雰囲気を感じた。 「プレーオフで優勝が決まったんですけど。本音を言えば、賞金をもらえないかなあと思っていました(笑)。今思うと、結局、仕事になってないなら、ゴルフやめてたかもしれない」 実際、現在はミニツアーなどに出場するプロ活動で、賞金を得ている。成績を出した分の見返りが入っていることは、仕事としてのモチベーションにつながっているという。 ■目標に対して逡巡するような言葉 プロテスト合格を目指している選手たちは、誰もがそのために努力を惜しまず、一心不乱に取り組んでいるように見える。少なくとも表向きは。 2023年までに2回最終プロテストに進出しており、十二分に合格が狙える有力選手であるにもかかわらず、その頃の平塚は、なんだか目標に対して逡巡しているような言葉が目立った。 その取り組みについても、コーチについてスイングをチェックしたり、トレーナーを付けたりしてフィジカル強化もしたほうが良いのでは?などと、傍から見て、何か言ってしまいたくもなる。 「最近は、ラウンド数とか試合に出るのも大事だなって思ってて。前は週一ラウンドしてれば良いほうだったので。ラウンドの中で自分で修正出来るように、芝から打つ感覚も磨こうという気持ちになってます。練習場に行ってない言い訳みたいですけど」