「バカげてると思われるかもしれないけど…」難病を克服してプロテストに合格した女子ゴルファー、平塚新夢が信じたもの
■「病を克服して輝くアスリート」とは少し違う 水泳の池江璃花子選手を例に出すまでもなく、将来を嘱望された若いスポーツ選手が難病に侵され、それを克服して再びプロテストという難関に挑戦する。それだけで感動的だし、多くの人が応援したくなるストーリーだ。意地悪な表現をすれば、ある種のわかりやすさがある。 ところが、平塚の場合は少し様子が違ってみえる。何が何でも、という感じにはあまり見えないのだ。困難に打ち克って、絶対にプロテストに受かってやるという信念のようなものが、少し希薄に感じられる。 シーズン前の春先に話を聞いたときは、プロテスト合格を目指す女子ゴルファーという微妙な立場を続けていることに、平塚は少し疲弊しているようでもあった。 プロテストに、絶対に受かりたいという気持ちはありますか?と聞くと、「なんか、ゴルフを嫌いにはなりたくないんですよね、やっぱり」という微妙な答えが返ってきた。 「そもそも今までの人生でも、あんまり何も挑戦してこなかったというか。出来ることしかしてこなかったんですよ。何かを突き詰めて取り組んで、出来ないことも出来るようにするっていう向上心を持ち合わせてない人間だったんで。 ゴルフをやってると、目標に向かって頑張れるかなという」 ジュニア時代から優秀な成績をあげていたのだから、挑戦してないわけでも突き詰めて取り組んでなかったわけでもないだろうが、本人の自己分析ではどうもそのようらしい。 ■コーチもトレーナーもつけないスタイル 平塚は現代のゴルフ選手としては珍しく、コーチにみっちりついて練習はしていない。時折、高校時代のコーチに見てもらっているが、基本的に自身で工夫して練習しているという。 弾道計測器やスイング解析ソフトを使いながら、最新ゴルフ理論に基づいてさまざまな練習ドリルを行っている選手たちとは、かなり趣が異なる。あえて言えば、自分の感覚を大事にする古典的な練習スタイルだ。 トレーナーもつけていない。近年は、選手たちの飛距離が伸び、成績の安定のためにもフィジカルトレーニングを行うことは必須となっているが、平塚はあまり気乗りがしないようだ。 「私、筋肉量が本当に少なすぎて、やばいんですよ。でも、わざわざ東京とかまでいくのは負担も大きくて。正直なところ、費用も結構かかるから、継続するのも大変なんですよね。トレーニングしたら、時給が発生したらいいのになあとか、冗談で思うことがあります(笑)」 多くの選手は、コーチの指導を受け、トレーナーからフィジカル強化のメニューや食事面の指導までを行ってもらい、少しでも競技パフォーマンスを上げるための努力を続けている。それをあまり必要としていない平塚の姿勢は、ツアーで活躍を目指す選手たちの中でも異質に見える。