ハリス氏が経済政策を発表:物価の安定と中間層支援をターゲットに
物価の安定と中間層支援をターゲットに
民主党大統領候補のハリス氏は8月16日、激戦州ノースカロライナで具体的な経済政策を初めて打ち出した。ハリス氏は自身の経済政策を「機会の経済(opportunity economy)」と呼び、「誰もが競争し、自身と子供のために富を築く機会を得て成功する真のチャンスを得ることができる経済を目指す。それを阻む障壁を取り除く」といった主旨の主張を展開した。機会均等、機会平等の原則を重視する考えだ。 ハリス氏が経済政策の主たるターゲットにしたのは、物価の安定と中間層支援である。これは、バイデン大統領が物価高騰の責任を国民から問われ、物価高問題が選挙で民主党の逆風になってきたことを強く意識したものだ。選挙戦略としては妥当なものだろう。さらに、経済的実利がより重視されるラストベルト(錆びた地帯)を含む激戦州での支持を広げる狙いがある。 物価問題については、不当な値上げで不当に利益を上げる企業に値下げを迫るものだ。不当に価格を吊り上げる企業に規則を設け、従わない企業に罰則を与えるなど、物価安定に向けた強い政策方針を示している。 これは、追加関税の導入を通じて企業を支援するトランプ氏の政策方針とは対照的なものであり、企業に対して厳しい政策だ。他方、ハリス氏は貿易政策やエネルギー政策については語らず、物価の安定と中間層支援に集中した。
課題はあるが選挙戦には有利に働くか
ハリス氏が掲げる経済政策は、トランプ氏が指摘するように価格統制色を帯びており、市場メカニズムを歪める恐れもある。不当な値上げを明確に定義し、見分けることも難しい。そもそも物価上昇率は落ち着いてきており、あえて統制色が強い政策を実施する必要はないのかもしれない。 またハリス氏が打ち出す子供税額控除などの中間層支援策は、財源があいまいで財政赤字を拡大させる恐れもある。さらに、大統領選挙で勝利しても、議会で民主党が両院を制さないと実現できない政策も多く、その実現可能性に疑問も残るところだ。 ただし、大統領選挙まで時間が限られるハリス陣営にとって、国民の支持を得るために、経済政策面で強いメッセージを打ち出す必要があることは確かだ。経済政策では、バイデン大統領はトランプ氏に大きく後れをとってきたが、ハリス氏が短期間でその劣勢を挽回するために打ち出した今回の経済政策は、選挙戦に一定の成果をもたらす可能性があるだろう。