おしゃべりな人ほどガードが堅い? 相手の“本音を引き出す”技術
マイストーリーを語られるだけでは聞く意味がない
しゃべりまくる人の大きな特徴は「自分語り」をすることです。 自分語りをする人は、こちらの質問の内容にかかわらず、幼少期から時系列で「自叙伝」を話し始めます。 自分はこんな家庭に生まれ、幼少期はこんな暮らしをしていて、学生時代はこう過ごし、その後、こんな苦労をしたものの、その苦労を乗り越えて今がある…。 このような、時系列のダイナミックなストーリーを語ることが非常に多いです。 今の自分だけを語るよりも、過去の苦労などを交えて話すほうが、自分の人生を圧倒的にドラマチックに描くことができます。 それを勝ちパターンの「マイストーリー」として準備しているのです。 しかし、この「マイストーリー」こそ、ホームページやほかのメディアに確実に載っているような話で、誰でも知り得る内容なのです。 これでは、まったく取材の意味はありません。 マイストーリーを語れるようになるというのは、話し手としてのひとつの技術ではあります。 それに対して、どうこうは思いません。私も取材を受けるときは、マイストーリー的な話し方をすることもあります。 ですが、マイストーリーというのは、ハッキリ言って「できすぎた話」なのです。それをそのまま載せるのはホームページで十分でしょう。 取材においては、マイストーリー以外の軸を作るべきだと思います。
とっておきの質問はその場でぶつける
マイストーリーの中にある事柄は、基本的には「オモテ」の話です。 過去の苦労話などがマイストーリーにちりばめられていることも結構あり、それは一見「ウラ」の話に見えますが、じつは「オモテ」の話を引き立たせるためのスパイスでしかありません。 人は、この「オモテ」ばかりのできすぎた話を求めていません。 大きな国道だけではなく、たまには裏道に入ってみましょう。そこにおもしろさが見えてくるものです。 マイストーリーの外に何があるのか。ここに足を踏みいれることが聞き手としての役割です。 そのためにも事前準備をしっかりし、マイストーリーは頭に叩き込んだ上で、その先に何を聞くのかいくつか質問を練っておきましょう。 ちなみに、こういったとっておきの質問は、先方に事前に「質問事項」として投げてはいけません。 その場で突発的に答えてもらうことが大事で、私はそこに取材の価値があると考えています。 繰り返しますが、マイストーリーを完全に否定するわけではありません。 マイストーリーというオモテの国道の隅にある裏道を通ってみると、意外とそこにお宝が潜んでいるという話です。 自分語りの多い人を取材するときは、宝探しをしているつもりでいろんな裏道を通ってみましょう。
井手隊長