母の三回忌で、不仲兄から《実家売却》の提案が…。共同相続した「約70坪の古家付き土地」を“適正価格”で売却するには?【行政書士が助言】
不動産オークションの留意点
本事例の場合、オークション取引で売却できれば、全員が納得できる適正価格で売却できることになりますし、もし、兄が“知り合いの不動産会社”にこだわるなら、その不動産会社にも入札に参加してもらい、他の競合と同じ土俵で公正に競ってもらえばよいだけです。 留意点としては、どんな不動産でも不動産オークションの対象になるわけではなく、むしろ対象となる不動産は限定的であるということです。対象となるのは、分譲マンションや収益マンション、収益アパート、分譲戸建て、サービス付き高齢者賃貸住宅などの事業用の土地(建物付き含む)であり、土地面積は最低でも50坪(165m2)以上が必要になります。 最低50坪以上となると、一般的な戸建て住宅の規模(土地:約30坪)を大きく超え、一般消費者が競って購入することは難しいため、買手は、事業用地を仕入れ続けることを業務とする不動産開発会社(大手から中小を含む)になります。競争入札が成立する前提条件は、1つの不動産を複数の買手が競って購入することなので、毎年(毎期)ごとに、事業売上を求められる立場の買手でなければ、競って買い続ける理由がありません。その特徴として、その期に土地仕入れが進んでいなければ驚くくらい高値で入札しますし、中小会社でも自分たちの営業エリア(地元)に大手が入ってくることを嫌い、今後の事業を死守するために予算を上積みして高値入札をする傾向があります。 また、不動産オークションには、「競り上がり方式」と「ポスティング方式」の2種類がありますが、売主が高値売却を希望する場合は、「ポスティング方式」一択となることにも留意してください。 平田 康人 行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表 宅地建物取引士 国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター 「相続・遺言・終活・不動産」に専門特化した行政書士事務所として活動。“行政書士業務”と“宅地建物取引業”を同時展開する二刀流事務所として、共有不動産の競争入札による売却や、仲介手数料が不要となる親族間・個人間不動産売買のサポートにも対応している。著書に『ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』『最新版 ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』(どちらも同文館出版)がある。
平田 康人