母の三回忌で、不仲兄から《実家売却》の提案が…。共同相続した「約70坪の古家付き土地」を“適正価格”で売却するには?【行政書士が助言】
不動産オークションが「共有不動産全体の売却」に役立つ理由
共有持分(各3分の1)単体の売却であれば、各共有者が単独で自由に売却することができますが、共有不動産の全体の売却(共同売却)には共有者全員の同意が必要になります。 共有者の関係が良好なら何の問題もないのですが、共有者同士がもともと不仲であったり、特定の共有者に不信感があると、全員の足並みが揃わず売却できなかったり、売却できても売却価格や売却までの経過を巡って揉めることがあります。本事例の場合、兄に対して不信感がある相談者が売却に応じなかったり、売却後も相談者と兄が揉めたりする可能性があります。 そんな不信感を払拭して不動産売却を進める方法として、不動産オークションというものがあります。不動産オークションでは、競争入札形式なので買手間に競争原理が働き、複数の入札価格を比較検討して売却価格を決めるため、1つの価格提示だけを見て「価格が高いか安いかわからない」ということはありません。また、入札要綱(入札ルール)の作り方によっては、入札の透明性や落札価格の納得性を高めることもできます。
不動産取引には、「相対取引」と「オークション取引」がある
不動産取引には相対取引とオークション取引の2種類があります。一般的に、大半の不動産には相対取引が採用され、不動産の特性(面積規模、各種規制、市場性など)によってはオークション取引が採用されます。 本事例の場合でいうと、例えば、実家の売却条件を「売却希望価格5,000万円以上、公簿取引、現状有姿」として、オークションを取り扱わない不動産会社に相対取引での売却を依頼する場合、売却条件をそのまま全部呑む買手が見つかればよいのですが、以下のような結果になることもあります。 ◆相対取引:「売手の希望価格」より安くなる場合がある 「数社に営業したところ、B社が4,900万円(坪70万円)なら買ってもいいということで、B社の買付証明書(買取価格:4,900万円)を貰ってきました。ただし、境界確定から地積更正登記まで売主側の負担と責任で完了する内容の条件(約60万円相当)が付いています。実質160万円の値引きとなりますが、いかがでしょうか?」 相対取引では、複数の買手に対し順次または一斉に営業し、そのうちの1社でも購入意思(境界確定等条件付き)が示されると商談が開始します。つまり、引き合い(買受意思表示)があった順に商談を行うため、相対取引の買手は「購入意思表示の早い順」で決まります。 従って、最終売買金額は、売却希望価格(5,000万円)を下回ることはあっても、上回ることはありません。 一方、同じ売却条件で、オークションを取り扱う不動産会社にオークション取引での売却を依頼する場合は、以下のような結果になることが多いです。 ◆オークション取引:「売手の希望価格」より高く売れる 「最低売却価格5,000万円で入札をスタートし、約50社の買手が検討した結果、5,000万円~5,800万円までの買取価格の入札が合計で11社ありました。なお、本件入札は、公簿取引と現状有姿取引を売却条件として入札要綱に定めましたので、境界確定から地積更正登記までの作業(約60万円相当)はすべて買主側の負担となります。結果、入札価格が最も高い5,800万円のC社に売却することをお勧めします。これが11件すべての入札申込書兼買付証明書です。」 オークション取引では、入札情報に関する秘密保持誓約書を提出済の50社に対して、一斉に入札要綱が配布され、入札期日までに11社の入札があり、その結果、最高値のC社が落札者に決定しました。つまり、オークション取引の買手は「購入価格の高い順」で決まり、最低売却価格の1~2割増しで落札することもあります。また、入札要綱には、入札参加者が承諾すべき「売却条件」が規定されているため、最終売買金額は、売却希望価格(5,000万円)上回ることはあっても、下回ることなくなります。