2025年「全羅南道の憤怒」が爆発し、朝鮮半島が激変する!
プーチン大統領の「悩みのタネ」
それから10年、ロシアと北朝鮮の立場は激変した。ウクライナ戦争で兵力と武器を消耗するウラジーミル・プーチン大統領は、どちらも潤沢な北朝鮮を頼った。 プーチン大統領と金正恩委員長は昨年6月19日、平壌(ピョンヤン)で「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結。プーチン大統領は北朝鮮の兵士と武器提供の見返りに、最新鋭の兵器の技術提供を認めた。 そして今年の5月9日、因縁のモスクワでの勝利80周年の軍事パレードを迎える。 10年前にプーチン大統領が金委員長をないがしろにしたのは、北朝鮮を貧国と見て軽視したということもあるが、もう一つは習近平中国国家主席という「主賓」がいたからだ。プーチン大統領は今回、習近平主席と金正恩委員長を左右両サイドに並び立たせる形で、軍事パレードを閲兵したいのではないか。 だが、それに「プライドの塊」である習近平主席が承諾するとは思えない。おそらく「金正恩をどかせ」と要求するだろう。どかされるなら金委員長はロシアへ行かない。プーチン大統領としては、実に悩ましいところだ。
北京でも盛大な「軍事パレード」
続いて、今年9月3日には、今度は北京で習主席が主催して、「抗日戦争反ファシズム戦争勝利80周年軍事パレード」が行われる予定だ。 10年前の70周年の時、習近平主席が天安門の楼台で両側に侍らせたのは、片方にプーチン大統領。もう片方は何と、朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領だった。当時は中韓蜜月時代だったのである。 ところがこれに怒り心頭となったオバマ大統領がすぐさま、朴大統領をワシントンに呼びつけ、THAAD(サード)ミサイル(終末高高度防衛ミサイル)の韓国配備を言い渡した。このミサイルのレーダーは約3000kmに及ぶため、北京上空がアメリカに筒抜けになる。 今度は習近平主席が激怒し、中韓関係は一気に暗転した。これもあまり言われていないことだが、この一件が、朴槿恵大統領が弾劾訴追を受け、2017年3月に失脚した遠因としてあったように思う。 そんな因縁の北京での軍事パレードに、おそらく李在明大統領は参加するだろう。アメリカには当然、強く反対されるだろうが、何かと理由をつけて振り切る気がする。つまり習近平主席は天安門の楼台で、プーチン大統領と李在明大統領を両側に侍らせることになる。 一方、トランプ大統領は、どこかの時点で、金正恩委員長との4回目の首脳会談を模索するだろう。李在明大統領も含めた三者会談になるかもしれない。金正恩委員長としては、10月10日の朝鮮労働党創建80周年の時に、トランプ大統領を平壌に招待したいはずだ。 このように、今年の朝鮮半島は「激変」が見込まれるのだ。1期目のトランプ政権の時は、当時の安倍晋三政権が、「バスに乗り遅れるな」(北朝鮮と早く手を握れ)という周囲の声をよそに、北朝鮮問題で静観。結果的に、米朝交渉が決裂し、南北対立も深まったため、この判断は功を奏した。 だが、この時の一連の動向を取材していた立場から言えば、安倍政権の洞察が優れていたというよりは、運が日本に味方したに過ぎない。今年の石破政権には、朝鮮半島の「激変」に対する機敏な対応を期待したい。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)