新たなギターヒーロー、MJ Lendermanが語る「Z世代のニール・ヤング」が生まれるまで
居場所が変わってもアートの探究は続く
2022年、家主のゲイリーが亡くなったため、全員がホー・クリークの家を退居しなければならなくなった。「街の家々は古く、住み続けるには適さなかった。街の価値といえば歴史とコミュニティだけだった」と、レンダーマンの幼馴染のミラーは言う。8月初旬に彼から届いたメールによると、アシュビル市議会が、家々の取り壊しと、新たに90戸を建てる再開発計画を承認したという。 後ろ髪を引かれたが、レンダーマンも街を去る心構えができた。「他の街で暮らしたことはなかった」と彼は言う。「いい機会だった」。 ダーラムで我々は、バーの前に喫茶店を探した。レンダーマンが、イタリアからの帰りでまだ時差ぼけが残っていたため、カフェインを必要としていたからだ。「ここがアシュビルなら、もう少し気の利いたところへ案内できるんだけどな」と彼は言う。「転居先を探す時間がなくて、落ち着かないんだ」という彼は、ダーラム辺りに住みたいという。休みが取れたらすぐにでも引っ越すつもりだ、と彼は語った。 いつ実現するのだろうか? 「わからない。こんなひどい状況は、生まれて初めてだ」。 ホー・クリークでの3人のクリエイティブなコラボレーターとの共同生活が終わりを告げたことで、当然のように、レンダーマンのコラボ作業の効率も落ちた。しかしソロ活動に関しては、常にある程度は彼自身がコントロールしてきた。『Manning Fireworks』で彼は、前作『Boat Songs』同様、ほとんどの楽器を自分でこなした。「単なるわがままさ」と彼は言うが、レンダーマンがドラムを叩くのは、レコーディングの時ぐらいしかない。しかし彼は、バランスを取る重要性もよく心得ている。『Manning Fireworks』に収録されたアコースティック曲に、友人でもあるランドン・ジョージがアップライト・ベースを弾き、アシュビルのミュージシャンであるシェーン・マッコードがクラリネットを担当したことも、作品が輝きを放つ要因のひとつだろう。アルバムの残りの曲を仕上げるため、ミラー、チェルミス、ベクトールド、ハーツマンといったいつものメンバーも集まり、それぞれボーカルやコーラス、ラップ・スティール・ギター、ピアノ、スライド・ビーボ(ミラーが生み出した、バンジョーをEボウで弾いてサスティーンを効かせる技に、レンダーマンが付けた呼び名)で参加した。 喫茶店でレンダーマンはアイスコーヒーを注文した。我々は、芸術活動と執筆活動はコラボレーションした方が効率がよいにもかかわらず、なぜ多くの場合は孤独な作業なのか、ということについて議論した。「自分が思い付いた酷いアイディアも、誰もが同じように考え出すと、突然酷いものではなくなる」と彼は言う。「もしかしたらそれは、元々そう悪いアイディアでなかったのかもしれない」。 レンダーマンは、曲を書き始める時はいつも少し怖さを感じるという。「怖いというよりは、毎回再教育されている気がする」。 5分で曲が浮かぶ時もあるが、それは稀な例だ。通常はいくつかのパターンを作り、試行錯誤しながら時間をかけて作り上げていくという。「脳をフル稼働させなければ、目標に到達しない。でも目標達成のための正しい道筋など、俺にはわからない」とレンダーマンは言う。「曲が完成した時の気分は最高だ。だから止められないのさ。自分の中のたわごとと向き合いながら苦労して作っても、出来上がったものを一人で見返して恥ずかしくなることもある」。 彼の才能や自信やビジョン、素晴らしい曲を作るための深い知識について、周囲の人々がどれほど高く評価しているかを、彼に伝えた。しかし同時に、我々が論じているのは「アート」なのだ。それは、永遠に探求し続けるべきテーマに違いない。 「100%そう思う」と彼は言う。「今回のアルバムを作っている時に、特に感じた。しかし、どう対処すべきか、答えが分からない。ある意味、それをあまり意識しないようにする方法を見つけ出すのが、自分に課せられたテーマのような気がする」。 --- MJレンダーマン 『Manning Fireworks』 発売中
JON BLISTEIN