新たなギターヒーロー、MJ Lendermanが語る「Z世代のニール・ヤング」が生まれるまで
ソングライターとしての矜持
レンダーマンとのインタビュー中、たびたびコメディオタク的な話題に及んだ。レンダーマンは子ども時代のお気に入りのコメディ映画として『Tommy Boy』を挙げ、フランク・カリエンドやジム・ガフィガンをきっかけにスタンダップ・コメディが好きになったという。また我々は、コナー・オマリー、ダン・リカタ、ジョン・アーリーといった最近のコメディアンや、『Comedy Bang! Bang!』や『Whitest Kids U’Know』などのコント番組、それからアダム・サンドラーの辿ってきたキャリアまで、幅広く語り合った。さらにコロナ禍のレンダーマンは、ドン・リックルズ、ボブ・アインスタイン、ハワード・スターンらに夢中になったという。 「コメディアンには大きなリスペクトを感じるんだ」とレンダーマンは言う。「人前で、しかも一人きりで自分の失敗に対処しなければならないなんて、不安が大きすぎて俺にはとても想像できない」。 ティム・ハイデッカーとグレッグ・ターキントンも、彼のお気に入りだという。二人はポッドキャスト&ウェブの長寿番組『On Cinema』で共演し、それぞれが音楽活動も行っている。ターキントンは長い間、癖のあるスタンダップコメディアン兼クルーナーのニール・ハンバーガー名義でも活動している。一方のハイデッカーは、コメディとは完全に別の音楽キャリアを重ねてきた。ハイデッカーが2019年にリリースしたアルバム『What the Brokenhearted Do…』は、幸せな結婚生活を送っている男が作った、恋愛と別れをテーマした作品だが、レンダーマンにとって重要な試金石となった。 「どの曲も際立っていて、コーラスの素晴らしいメロディ・ラインが特徴的だ」とレンダーマンは言う。「ランディ・ニューマンのユーモアに通じるものがある。かなり自己陶酔的だ。ハイデッカー自身が演じる数々のキャラクターとも共通している。かなりお気に入りだ」。 レンダーマンの初期の作品は、彼曰く「自分をさらけ出した自伝的な」作品だった。そこから徐々に、架空のキャラクターを中心にした曲へと進化していった。『Manning Fireworks』では、酔っ払いと騒々しい奴、寂しがり屋や不器用な人間、離婚した中年男、そして何でも持っているように装う自慢屋たちのストーリーを紡いでいる。タイトル曲「Manning Fireworks」の登場人物は、熱心すぎる上に攻撃的で、性欲が強く独善的で、死ぬまで自分が失墜していることに気づかない。典型的なレンダーマン作品のキャラクターたちだ。「かつての完璧な赤ん坊が / 今や嫌な奴」とレンダーマンは歌う。「火葬場のそばで花火を上げる」。 ニール・ヤング、ジェイソン・モリーナ、デヴィッド・バーマンらは、レンダーマンの憧れの存在であると同時に、ソングライターとしての類似性も指摘されている。また、コメディアンのコナー・オマリーの作品にも共通点を見出せる。オマリーが演じるのは、見掛け倒しのエゴを持ち、男らしさを誇示したいという最悪の衝動に駆られた男たちだ。 レンダーマンに、作品にどれだけ自分自身を投影しているかを尋ねてみると、曲による、との答えだった。「自分が悪い人間です、などと敢えて歌おうとしている訳ではない。間違ったことをしている自分をテーマにするのは、健全なやり方ではないと思う。それよりむしろ、ある状況において自分ならどう対処するか、というように、自分に置き換えて考えることが重要なのさ。だからこそ、こういったテーマに取り組むのが面白い。人々からの共感も得やすいと思う。誰にも同じような経験があるはずだからね」。 レンダーマンはしばらく沈黙した後に、笑い出した。「よく知らないけどね。俺は専門家じゃないし」。