香水選びの近道に⁉︎ 香りの“共感覚”がフレグランスの世界を変える
「イソップ」もまた、香りを単なる嗅ぐものではなく、感覚的な体験全体と捉えている。長年のチーフパフューマーであるバーナべ・フィリオンにとって香りは、製品を体験するための重要なツールだと話す。このアプローチの具体例として、「イソップ」の最新香水トリオのプレス発表会が挙げられる。 ここで参加者は、ユニークなワークショップを通じて、各香が引き起こすビジョン、感情、感覚について表現した。さらに、「イソップ」は“ラジオマティーク ミックステープ ”という新たな取り組みを発表した。これは香りと音の出会いからインスピレーションを得たポッドキャストで、聴覚的共感覚の力を探る音声番組となっている。
フレグランス業界では、香りを超えた多感覚的な体験を提供することが新たなトレンドとなっている。フレグランスエキスパートのアリス・デュ・パルクによると、香水は単なる香りだけでなく、色、音、質感を通じて個性やストーリーを語る手段として進化している。この多次元的なアプローチは、消費者に強い感情的なつながりを提供し、記憶や感情、ノスタルジアの旅を促している。 実際、新しいブランドがイノベーションを求める声に応えて続々と登場している。特に注目すべきは、ビリー・アイリッシュが立ち上げた香水ブランド「ビリーアイリッシュ フレグランス」だ。 ビリーの音楽と香りのブランドは、彼女自身の共感覚的才能、つまり“音楽や香りが見える”という体験から生まれている。これは彼女の音楽活動にも大きな相乗効果を与えている。
一方で、「イソップ」での成功を受けて、バーナベ・フィリオンは「Arpa」を設立した。このブランドは、アーティストやDJ、彫刻家たちと協力して、香りに対応するビジュアルやサウンドを創出している。 また、「Arpa」の香水はフィリオンの旅の経験からインスピレーションを得ており、それぞれの香りは視覚的な要素が際立っている。フィリオンは自身のブランドを“共感覚研究所”と称している。 さらに、ヤスミン・スウェルによって創立された「バイラオ」も注目されている。彼女は「色彩を感じ、色彩と香り、そして音を結びつけること」が可能だと述べている。スウェルが目指すのは、香水を通じて気分を変えること。各香水は彼女にとって象徴的な色でボトリングされており、そのコンセプトがよく表れている。