香水選びの近道に⁉︎ 香りの“共感覚”がフレグランスの世界を変える
この複雑な神経活動を、科学的な背景を持たない人々にも理解しやすく説明するため、「バイラオ」の調香師ヤスミン・スウェル は共感覚を「感覚的な感情の組み合わせ」と表現している。 共感覚の感性は今、香水の世界における独自の解釈と体験を深める鍵となっており、注目を集めている。特に嗅覚と視覚の結びつきは、香水それぞれが織りなす物語を豊かにするからだ。
私がここ数カ月で共感覚に対する理解を深め始めたのは、香水業界全体のおかげである。少し前、私の受信トレイに“色を嗅ぐ”という件名のメールが届いた。ヌール・イブラヒムが作った新しいフレグランスブランド、「ブルー ヌール」の紹介だった。 わずか数パーセントといわれる共感覚の持ち主であるイブラヒムは、「それぞれの香りに従来の香りの概念を超えた、視覚的なアイデンティティを与えることができます」と説明している。このユニークな才能を生かし、彼女は香りの創造と販売の仕組みを展開することとなった。
イブラヒムは、「私たちのブランドは、色を基にしたフレグランスデザインに加え、私が"共感覚的アプローチ"と呼ぶ方法を採用しています。このプロセスでは、アート、空間、自然から得られた色彩が香りのインスピレーションとなります。これらの色を共感覚を通じて独特な香水に変えることで、単なる楽しい香り以上の、多感覚を刺激する体験を創出しています」と説明する。 この斬新なコンセプトを持った「ブルー ヌール」は、私が共感覚を駆使したブランドの世界を知るきっかけとなったが、必ずしもこのブランドが初めてというわけではない。実際これまでにも、多くの著名な調香師が多感覚的な才能を用いて象徴的な香りを創り出している。なかでも「フレデリック マル」がよく知られているだろう。 彼のブランドは世界中のセレブリティやビューティエディター、香水愛好家に愛されている。共感覚的な能力に恵まれたマルは、香りの創造過程において色彩や明暗を密接に取り入れていると述べている。