香水選びの近道に⁉︎ 香りの“共感覚”がフレグランスの世界を変える
フレグランス業界に新たな変革が訪れている。従来の香水選びの基準だった香りの“好き/苦手”の枠組みを越え、視覚、聴覚、触覚をなど組み合わせた全感覚的な共感覚体験を顧客に提供するブランドが増加中。五感をあらゆる角度から刺激するフレグランスがどのように私たちの香水選びを豊かにするか、UK版「エル」より。
人には感覚を豊かにする多くの現象があるが、なかでも“共感覚”と呼ばれるものが今注目されている。これは、異なる感覚が交差する能力で、たとえば、色を見て味を感じたり、音を聞いて香りを嗅ぐことができるといったものだ。 私自身は長い間、この共感覚が普通のことだと思っていた。香りを嗅いで映像が浮かぶなど、周囲の世界を多面的に感じることは、私にとって自然なことだった。 たとえば、「シャネル」の“ベージュ”は、その香りが黄色い星が輝く絵文字のように明るくキラキラとした印象を私に与える。一方で、「ル ラボ」の“テ ノワール”は真夜中や、魔女の世界観を思わせる深い闇を感じさせる。 そして、「エセントリック モレキュールズ」の“モレキュール01”は、スマートでスレートグレーの風合い、または氷で冷やしたジンのような清涼感を視覚的にも感じ取ることができる。 しかし、専門家の間では“感覚の融合”として表現されるこの“共感覚”は、全人口のわずか2%から4%にしか見られない特殊な現象であることを知った。 神経心理学とニューロパーフューマリーの分野では、この珍しい感覚体験に光を当てるための研究が進んでいる。
共感覚は、ある感覚刺激が別の無関係な感覚を自動的に引き起こすという、神秘的で魅力的な知覚体験だ。この現象は、研究者デイヴィッド・ブラングとV.S.ラマチャンドランによって「感覚領域間のコミュニケーションの増加から生じる」と説明されている。 さらに興味深いことに、共感覚は家族間で遺伝的に伝わる傾向があり、少なくとも60種類の異なる形態が存在することが確認されている。これらの形態は、視覚的、聴覚的、嗅覚的など、さまざまな感覚の組み合わせを包括しており、脳の異なる部分が連動して機能することで発生する。