「日朝首脳会談」が実現する可能性、現状では極めて低い
安倍晋三首相が今月末に訪米し、アメリカのトランプ大統領と会談します。トランプ氏の来日が続くため、6月まで3か月連続で日米首脳が会談することになります。そんな中で訪米する狙いの一つに北朝鮮の問題があると、元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏は指摘します。しかし日朝首脳会談が実現する可能性はあるのか。美根氏に寄稿してもらいました。
対北朝鮮を見据えた? いくつかの布石
安倍首相は4月26日、27日に米国でトランプ大統領と会談を行う予定だと伝えられています。翌5月25日には、トランプ大統領が新天皇即位後初の国賓として来日。さらに6月には大阪で開催される主要20か国・地域(G20)首脳会議に出席のため再度来日する可能性が高くなっています。トランプ大統領が立て続けに来日するのに先立って、安倍首相が米国を訪問するわけですが、その理由の一つは北朝鮮との関係です。 日本政府は、安倍首相と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談を実現したい考えです。昨年来、いくつかの手を打ってきており、今年になってからは、国連の人権理事会で、北朝鮮における人権侵害問題について例年と違った姿勢で臨みました。これまでは北朝鮮に対する非難決議案をEUと共同で提出していましたが、今年は共同提案国にならなかったのです。こうすることによって、日本が北朝鮮との対話に前向きであることを示そうとしたのでしょう。 その背景には、さる2月末、ベトナムのハノイで行われた第2回目の米朝首脳会談が失敗に終わったので、これからは安倍首相と金正恩委員長の首脳会談が焦点になるという見方もあるようです。 しかし、日朝首脳会談が実現する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。 国連の人権理事会に出席した辻清人外務大臣政務官は「これまでの北朝鮮人権状況決議は、北朝鮮当局による日本人拉致問題を始めとする北朝鮮の深刻な人権侵害に対し、国際社会が引き続き強い懸念を有していることを示しています。日本は、国際社会と緊密に協力しつつ、北朝鮮が拉致問題の早期解決を含む国際社会との協力に向けた具体的行動を取るよう、引き続き求めていきます。国際社会からの支持を引き続き期待します」と発言しました。しかし、これではなぜ態度を変えたのか、さっぱりわかりません。 しかも、日本政府は北朝鮮がもっとも嫌う日本独自の制裁は維持すると言っています。日本政府は北朝鮮に友好的なサインを送りたいのか、そうでないのか分かりません。