「日朝首脳会談」が実現する可能性、現状では極めて低い
会談に消極的な姿勢へと変わった金委員長
日本政府は人権理事会に先立ち、いくつかの手を打ってきました。安倍首相は、もともと世界の指導者の中で、最も強く北朝鮮に圧力を加え続けるべきだと主張してきましたが、昨年9月25日の国連総会演説では、「拉致問題を解決するため、私も北朝鮮との相互不信の殻を破り、新たなスタートを切って金正恩委員長と直接向き合う用意があります」と、世界に向かって同委員長との直接会談に前向きの姿勢を示しました。 しかし、北朝鮮側から積極的な反応を引き出すことはできませんでした。最大の理由は金正恩委員長が安倍首相との対話に応じようとしなかったからだと思います。 金委員長は、昨年6月のトランプ大統領とのシンガポール会談の際は、「安倍晋三首相と会う可能性がある。オープンだ」と積極的でした。 しかし、金委員長はトランプ大統領や文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との会談で拉致問題の解決を求められるに従い、日本側の姿勢に不満を募らせました。 金委員長は昨年10月、「日本との直接交渉を促すトランプ大統領や文在寅大統領らに対し、拉致被害者の横田めぐみさんの家族同士の面会を認めたことなども挙げ、日本には『多くの譲歩』をしていると主張し、交渉停滞の責任は日本側にあると反論した」と発言したと伝えられました(日本テレビ、2018年10月16日)。この情報は拉致問題の状況を正しく反映しており、正確だったと思います。
「日本に譲歩している」北朝鮮側の意図は?
日朝関係が前進しない主要な原因は、拉致問題が解決しないからですが、これについて金委員長は次のように考えている可能性があります。 1つは「拉致問題は金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に終わっているはずだが、日本側の要望を入れ2014年に自ら特別調査を指示した。しかし、日本側を満足させることはできなかった」ということです。金委員長が特別調査を指示したのは間違いないことでしょう。日本側ではそのことをあまり重視していないきらいがありますが、注意が必要です。 もう1つは「その結果を説明したが、日本政府はその内容を公表さえしなかった。それは国家間の関係ではあってはならないことだ」ということです。 拉致問題はそもそも北朝鮮が引き起こしたことですが、日朝の首脳が話し合うためには、北朝鮮の非を鳴らすだけでは前に進めません。金委員長が誤解していると安倍首相が思うならば、それを解く努力が必要です。