「死にたい」は「だよね」くらいで肯定したほうが救われる――ZOCから改名したMETAMUSEが目指す「希望」
振り付けを担当し、大森と同じ「共犯者」からメンバーとして加入した雅雀り子(26)は、邪推の余地があるとファンに心配をかけるため、逆に相手を明示するようになったという。 「今でも嫌なの見つけると、全部言い返したくなっちゃうけど、喜ぶからやめろってみんなに言われるからやめてます。ZOCのみんなに迷惑をかけたくないし、オタクも嫌な思いをできるだけしてほしくないから、最近はバレエの先生にいじめられたってことだけを赤裸々に書くようにしました(笑)」
昨年加入した鎮目のどかは、現在16歳。TwitterとInstagramで使い分けているという。 「私のファンの人は若い人が多いので、インスタでストーリーを上げたり、投稿したり、けっこうまめに使用したいなって思ってます」
私たちもおかしい側の人間
大森は、SNSでの人との向き合い方そのものを変えたという。 「私はすごい炎上しやすいので、たぶんSNSにあんまり向いてる性格じゃないんです。発言に気をつけて、かつ単語でミュートをかけると、1個、2個で嫌な事象が全部消えたりするので、相当語彙力がないんだなと思って、それはそれで悲しくなります。その語彙力のなさで人を傷つけようっていう魂胆なんだったら、浅いよって(笑)。『私を傷つけるためにちゃんと向き合ってくれてないな』って思います。私のことを、めちゃくちゃ見て嫌ってる人には、傷ついたり、向き合ったりしてあげたいっていう気持ちになります」
「近年、『人間はクソだけど、曲はいい』に対する回答が自分の中でできて。『曲だけ聴けばいいじゃん』って(笑)。なんで、そちら側だけ私の人間性に関与する権利を無料で持ってるんだろう、って。じゃあ私も関与する権利を持ちたいと思って、Twitterで『大森靖子』って打った時点でフォローするようにしてるんですよ。関与するって決めたら関与しきってほしいし、私も見るしっていう関係性でありたい。愛することも傷つけることも避けている人間に、私の人格を否定したりする権利があるのかなって思っちゃって。『私の人間性を問うってことは、そっちも人間になるってことだよな』って思うと、『上等だよ』って気持ちになります」 ZOCの炎上についても「洗練されてきました、赤い炎から青い炎に」と笑う。 「ファンの人のためにもメンバーのためにも、炎上したとしても、できるだけ短くしたいじゃないですか。炎上するってわかってることを発表しなきゃいけないときもあるけど、『は? 説明しろ』っていうカルチャーがありますよね。でも、誰かを守るために言わないほうがいいこともたくさんあるし、でも、全部ばれちゃったり、勘違いされちゃったり、違うふうに言われたり、ないことがあることになったりするのがZOCだと思うんです。そういうなかでも『できるだけ誤解が生まれないように、これだけは先に言っとこう』っていうことは、先手を打つようになりました」 そんなZOCが、2月から6月までに開催したツアーは、コロナ禍で中止を余儀なくされた公演もあるが、当初は26都市56公演にも及んだ。 「このご時世でライブに来る人なんで、そもそもがおかしいじゃないですか。で、世の中側からすると、私たちもおかしい人側なんだと思うし。そういう人たちはやっぱり救済と祝福を求めてると思うんですよね。コロナ禍で普通に生きてるだけじゃ満足できない。ライブも、ある程度テンプレ化してる文化だったりするんです。『エモい』って表現される『エセエモーショナル』がいくらでもあるじゃないですか。だから、ZOCにしかないものに気づいてくれればいいなと思っていて」