母子世帯の過半数、元夫と養育費取り決めないまま離婚…泣き寝入り余儀なく、なぜ?
7割ものひとり親世帯が養育費を受け取れていないのはなぜか。今後、改正民法で不払い対策が強化されるが、ひとり親の声からは泣き寝入りを余儀なくされている実態が浮かぶ。 【図表】養育費の取り決めをしていない最大の理由
「関わりたくない」
不払いの要因の一つが、離婚時に養育費について父母で取り決めた割合の低さにある。厚生労働省の2021年度調査では、ひとり親世帯の9割を占める母子世帯の51・2%が元夫と取り決めていなかった。最も大きな理由を尋ねると「相手と関わりたくない」「支払う意思がないと思った」などが挙がり、双方の感情や経済的な事情が大きな妨げになっている。 国は養育費の大切さを知ってもらおうと、自治体を通じ、離婚届を取りに来る父母に合意書のひな型を示すパンフレットを配布。父母が取り決めた内容を公的に証明する公正証書の作成費、弁護士への相談費用などをひとり親に補助する自治体も増えている。
履行の仕組みを
だが、取り決めていても支払いが途切れ、「空手形」に終わるケースは後を絶たない。裁判所に給与などの差し押さえを申し立てる強制執行のハードルも高い。 派遣社員として働く近畿地方の40代女性は7年前の離婚時、自営業の元夫が子ども2人に月計6万円を払う約束で公正証書を作ったが、次第に支払いが滞った。元夫の気分を害さないよう、振り込みを促すメールの言葉一つにも神経を使ったが、3年もたたずに一切払われなくなった。
自治体に養育費の支払いを保証する会社を紹介されたが、未納があるケースは応じてもらえなかった。元夫の収入は不安定で「受け取れるかわからないのに裁判にお金を使い、仕事を休むのは負担が重すぎる」とため息をつく。 近畿地方の30代母親も離婚後1年ほどで元夫に「再婚する」と告げられ、長女への月5万円の支払いが止まった。会社勤めの傍ら、パートと内職をかけ持ちする生活で、「その5万円を稼ぐために、どれだけ睡眠や娘との時間を削って働かないといけないか、わかっていない」と憤る。 ただ「給与を差し押さえるつもりはない」と言う。夫は頻繁に仕事を変えており、転職のたびに裁判所に申し立てなければならないからだ。