母子世帯の過半数、元夫と養育費取り決めないまま離婚…泣き寝入り余儀なく、なぜ?
知人には元夫の名前を見るだけで過呼吸になるシングルマザーもいる。「ひとり親の負担がなく、支払い義務が確実に履行される仕組みにしてほしい」と願う。 一方で、強制執行に踏み切った関東地方の女性(58)は「養育費は別居の親から息子への『いつも気にかけている』というメッセージ。たとえ数千円でもいいから、息子との約束は守ってほしかった」と理由を語る。 息子が4歳の時に裁判所で離婚が成立。元夫と月4万円の養育費を取り決めたが、5年ほどで支払いが途絶えた。やっと訪れた息子との穏やかな生活を乱したくないと諦めかけたが、「息子が将来、『お父さんに見捨てられた』と感じるかも」と考え直し、元夫に電話をかけた。
「次のボーナスで全額払う」。返事とは裏腹に振り込まれず、連絡がつかなくなった。やむなく弁護士に12万円を支払い、強制執行の手続きを依頼し、以降の元夫の給与から養育費を差し押さえた。 こうした強制執行に踏み切るひとり親はごくわずかだ。 法務省が30~40代の離婚経験者に行った20年度の委託調査では、回答したひとり親119人中、申し立てたのは9人で、差し押さえが実現したのは1人に過ぎない。申し立てない理由には「費用がかかる」(29・1%)、「(取り決めに関する)書面がない」(19・1%)などが挙がった。
父母の収入などに基づき、裁判所が金額の目安を示した算定表への疑問の声もある。 未就学の息子を抱える関東地方の30代母親は元夫と調停の末、算定表を基に養育費を月5万円と取り決めたが、子どもの食費や教育費などを補いきれない。息子の体調不良などで仕事を休むと月収が落ち込み、さらに苦しくなったという。 「生活保護に頼らざるを得ない時期もあったが、元夫は購入したブランド品をSNSに上げる生活を送っていた。そもそも算定表が示す金額が低すぎる」と嘆く。