「アライ」って何? 役割は? 「LGBTQ」をはじめとした性の多様性を理解し行動するために必要な視点
レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)に、さらにクィア(Queer)やクエスチョニング(Questioning)を付け加えた、性的マイノリティ(性的少数者)を表す言葉「LGBTQ(エル・ジー・ビー・ティー・キュー)」。 2024年4月に開催された「東京レインボープライド2024」でも、「LGBTQ」の当事者はもちろん、多くの「アライ」がパレードに参加し、大きな話題となりました。 「アライ(Ally)」とは、「LGBTQ」をはじめとする性的マイノリティ当事者のことを理解、支援しようとし、差別や偏見をなくすために行動する人のことです。性の多様性を尊重し、誰もが生きやすい社会をつくるために「アライ」は重要な存在といえます。 今記事は、どんな性の在り方でも公平に生きられる社会の実現を目指す一般社団法人fairの代表理事を務める松岡宗嗣(まつおか・そうし)さんに、性的マイノリティに対する現状と「アライ」の役割、性の在り方に関係なく誰もが生きやすい社会をつくるために必要な視点について話を伺いました。 松岡さんは、自分も当事者(ゲイ)であることをオープンにし、政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報の発信に力を入れています。
「アライ」は性的マイノリティ当事者に寄り添う「味方」
――日本における性的マイノリティへの理解は、昔と比べるとずいぶん進んだように感じます。松岡さんは、現状をどのように捉えていますか? 松岡さん(以下、敬称略):確かに、昨今はSNSの普及や「LGBTQ」関連の話題がニュースで取り上げられることも増え、性的マイノリティに関する理解は広がってきたように感じます。昨年(2023年)6月に「LGBT理解増進法」が施行されました。多くの課題を含む法律でしたが、これまでなかなか実現しなかった法整備が進んだという点では少しずつ変化が生まれてきたといえます。 しかし、まだ自分の身近に性的マイノリティ当事者がいるという感覚を持っている人は少ないのではないでしょうか。 2020年に厚生労働省が公表した職場の実態調査では、自分の職場に性的マイノリティの当事者がいることを認知している人はほとんどいないことが分かっており、回答者の約7割が「わからない」「いないと思う」と回答しているんです。 多くの人が、性的マイノリティ当事者が世の中にいることは分かっているけれど、身近な存在として捉えられていないというのが、現状ではないでしょうか。 ――そのような中、性的マイノリティ当事者が抱える問題について、どのような変化を感じていらっしゃいますか? 松岡:自分の性自認や性的指向を開示すること、いわゆるカミングアウトをする人は増えつつありますが、全体的にはまだ少なく、誰もがカミングアウトできる状況ではないと考えます。 カミングアウトをして受け入れてくれる人がいる一方で、職場でハラスメントを受けたり、学校でいじめられたりと、当事者の生活に大きく影響を及ぼすケースはまだまだ少なくないと思います。 そこでキーパーソンとなるのが、「アライ」の存在なんです。 ――具体的に「アライ」とは、どのような人のことを指し、どのような役割を担っているのでしょうか? 松岡:一般的には、「性的マイノリティではないけれど、性の多様性を理解し、支援したいと思い、差別や偏見をなくすために行動する人」のことを指し、もともとは「性的マイノリティの権利運動の中で共に闘う人」という位置付けだったと思います。 そのため「アライ」として声を上げることで、当事者に対するものと同じように差別的な言葉が投げつけられる可能性もあり、勇気が要るものです。 今もその役割に変わりはありませんが、昨今は「理解したいと思っている」と表明する人も「アライ」と呼ばれることもあります。定義や役割がより柔軟になり、ハードルが低くなりつつあるといえるかもしれません。 ――ハードルが低くなれば、「アライ」と表明する人は増える気がしますね。 松岡:そうですね。実際に、私は大学時代に「LGBTQ」に関するさまざまな啓発イベントを企画しましたが、その時は「誰もが誰かのアライになれる」というキャッチフレーズを掲げていました。今も「誰でも味方になれるはず」という思いは変わりません。 もちろん理想としては、寄り添うだけじゃなくて、当事者の権利を守るために一緒に声を上げてくれるところまで含めて「アライ」になってほしいですが、誰にとってもステップは必要だと思いますし、裾野を広げるという点で1人でも多くの「アライ」を可視化することが重要だと思っています。