「アライ」って何? 役割は? 「LGBTQ」をはじめとした性の多様性を理解し行動するために必要な視点
知識だけでなく、身近な存在として捉えることが大切
――性的マイノリティへの理解は進んでいるものの、まだまだ当事者が生きやすい社会ではないように感じます。どんな性の在り方でも生きやすい社会をつくるには、どのような取り組みが必要だと思われますか? 松岡:社会の枠組みとして、まずは法制度を整えることが大事だと思っています。理解を先に進めてから法律を整備することが順当だと言われることもありますが、私はやはり平等な制度があってこそ人々の認識が変わると考えています。 例えば、「LGBT理解増進法」が施行されましたが、差別を禁止する規定はなく、解雇やサービス提供拒否など具体的な差別の被害に対応できません。性的指向や性自認を理由とする差別を禁止する法律も必要だと考えます。 差別は駄目だというルールが根本にあることによって、一人一人が「差別とは何だろう」「どのような差別をしてはいけないのか」と考え、認識を変えていくはずです。昨今は同性婚に関するニュースが多く取り上げられていますが、これも同様に、同性婚が法制化され「婚姻の平等」が実現することで、異性カップルも同性カップルも同じように平等な存在だと捉える人が増えていくと思っています。 ――社会の取り組みと共に、私たち一人一人ができることはありますか? 松岡:「LGBTQ」といった言葉は知られるようになりましたが、まだ身近な存在と捉えている人は多いとはいえません。その壁を超えるためには、まず当事者を取り巻く社会の現状について知ること、実際に当事者と知り合って肌感覚としても知ることが大切ではないでしょうか。 一人一人にできることはたくさんあります。例えば、SNSやメディアを通して性的マイノリティのニュースを積極的に見るようにしたり、できればSNSでいいねやシェアすることから始めたりするのも良いと思います。こうしたニュースを切り口に、身近な人との会話の中でも、性の多様性をポジティブに捉えていることを話してみるのも良いかもしれません。 また自分について話すときが、自分自身の性の多様性に関する捉え方を伝えるシグナルになることがある、と知っておいてほしいですね。 私の知人の男性のケースですが、職場で自分の妻のことを「パートナー」と表現して話していたそうなんです。なかなかその職場では自分の配偶者をパートナーと呼ぶ人はいなかったそうで。その方は数カ月後、別の同僚から性的マイノリティだとカミングアウトを受けたそうです。言葉の選び方一つとっても、当事者は「この人なら伝えても大丈夫かもしれない」と敏感に感じ取っていたりするんですよね。 ――同性同士の恋愛ではよく用いられる「パートナー」という言葉で、その人が性的マイノリティに対してポジティブに捉えているというシグナルになったのですね。 松岡:そうですね。私の知人のように、自分のことを話すときも、ジェンダーニュートラルな言葉に変えることで、「アライ」でありたいと思っている姿勢を発信するきっかけになったりすることもあります。 また、さらに踏み込んで活動できるのであれば、NPOといった団体に参加するのも1つの手段だと思います。婚姻の平等の実現(同性婚の法制化)を求めている団体や、性の多様性に関する教育を広げていこうとしている団体などがあります。できるところから徐々に支援の段階を上げて関わっていってもらえるとうれしいなと思います。
編集後記
取材中、松岡さんがお話しされた「誰もが誰かのアライになれる」という言葉に心を打たれました。 それはきっと性的マイノリティの問題に限ったことではありません。マジョリティ、マイノリティに関係なく、互いに抱えている困り事や悩みに寄り添い、支え合うことができれば、誰もが生きやすい社会の実現につながると思いました。 私もそんなやさしい社会をつくる一歩を踏み出してみたいと思います。
日本財団ジャーナル編集部