ノジマ傘下入りが決まった「VAIO」の物作りはどうなる? 安曇野の本社工場を見学して分かったこと
完成後検査とソフトウェアのインストール/梱包
組み立て工程が終わると、完成後検査とソフトウェアのインストールが行われる。 新しい最終チェック工程「FCC」
「VAIO Vision+」の組み立て工程も紹介
今回は、VAIO Vision+の組み立て工程も見学できたので合わせて紹介する。
高い品質を担保する「環境試験室」
VAIO PCの高い品質を実現するために重要な役割を担っているのが「環境試験室」だ。同社では、開発段階において試作機を用いつつ約50項目の環境試験を実施した上で、2回に渡る信頼性試験を経て出荷可否を判定し、製品を市場に投入している。 これらの試験は、ユーザーのさまざまな使用環境を想定したものだ。PCを机から落としてしまった場合や、想定外の振動や圧力がかかった場合でも、安心して利用できる強度を確保した設計をするためには欠かせない。 製品の出荷後も、想定外の利用によって発生する不具合など、東京都に拠点を構える技術営業部門を経由して市場から得られた情報をもとに、試験内容を改善/変更/追加することを繰り返している。これにより、ユーザーの利用環境の変化に合わせて試験も進化を続けている。VAIOとして独立してから、試験項目は約10個増えたそうで、主に法人ユーザーや学生ユーザーを想定した新試験が追加されたという。 安曇野の本社内には、設計部門や品質保証部門も同居している。そのため、試験内容を迅速に変えられるのも強みだという。
法人ユーザー向け「キッティングサービス」も本社工場で
法人ユーザーの拡大に合わせて、VAIOでは「キッティングサービス」も強化している。 キッティングサービスは、100台以上の同一機種を導入する法人ユーザーを対象に提供している。企業の利用環境に合わせて、OSやネットワークの設定、企業固有で利用するアプリなどをあらかじめセットアップした状態で出荷できる。企業では、導入時の煩わしいインストール/設定作業が不要になり、IT部門の負担を減らすことができる。 本社工場には専用キッティングルームも設置されており、法人向けビジネスの拡大に向けて、約5年前からエリアを拡張した。1日当たり100~150台の設定に対応できる体制が整えられているという。この部屋には、VAIOの社員の中でも限られた担当者だけが入室できるようにしており、セキュリティ面の配慮も抜かりない。 加えて、7つの「お客さま専用ルーム」を設置し、VPN回線を使った環境を構築することで、隔離されたネットワーク環境で作業を進められるようにもしてある。 同社によると、キッティングサービスを利用する企業は法人ユーザーの3割程度にまで広がってきたという。 VAIOにおけるキッティングは、「開梱/専用OSインストール」「個別設定」「BIOS(UEFI)設定/梱包」の3つの作業に分類される。一般的に、キッティング作業は1人の作業者が全工程を行うことが多いが、VAIOでは各工程に専門の作業者を配置することで、作業の安定性と効率化、高品質を実現している。 正確性や効率性を高める工夫として、「コンピュータ名のバーコード化」「BIOSパスワードの専用設備での自動入力」にも対応しており、全数を自動で同一設定にそろえやすくしている。 顧客ごとの専用OSイメージの作成担当者にはOEM向けOSの開発(カスタマイズ)を経験したことのある人を当てたり、また、キッティング作業にはPCの組立工程を経験したことのある担当者を当てたりと、メーカー品質でのキッティングの実現にも工夫を凝らしている。 また、PCメーカーの国内生産拠点でキッティングを行うという強みを生かして、キッティング済みPCは安曇野の本社工場から直送される。これにより、初回導入時の保管や輸送費が不要となる。また、万が一故障した場合でも、修理部門との連携によって迅速に修理した上で、工場で再キッティングして配送することも可能だ。 本社工場でキッティングされたPCは、生産工程のノウハウを活用して「トレーサビリティー」を確保している。全工程の履歴が管理されているので、再キッティングの作業も容易に行える。 日本品質およびメーカー品質でキッティングを行えるのが特徴だ。