ノジマ傘下入りが決まった「VAIO」の物作りはどうなる? 安曇野の本社工場を見学して分かったこと
基板実装工程
「基板実装工程」では現在、薄型軽量のモバイルディスプレイ「VAIO Vision+」の基板の他、セキュリティチップ(TPM)、指紋センサーなどを生産している。一方で、VAIO SX14-Rを含むノートPCのマザーボード(基板)は協力工場で生産しているという。 「せっかく工程があるのに、ノートPCの基板を作らないのはどうして?」と思うかもしれないが、現在の生産規模を鑑みると、自社で基板を生産するよりも、協力工場の生産体制を活用した方が部品調達力やコスト面でのメリットがあると判断しているとのことだ。ただし、工場内に「外観検査機」を設置し、納入された基板を全量検査することでVAIOならではの品質を維持している。 なお、基板の全量検査はVAIO SX14-Rから新たに導入された。VAIO SX14-Rの海外生産分についても、当地で検査を行った「安曇野品質」が保証された基板を輸出することで品質の維持につなげるとのことだ。 一方で、VAIO Vision+の基板などの製造など継続/維持しているのは、基板実装工程におけるノウハウの蓄積と、技術者の確保/継承を目的としている。協力工場との対話においても、蓄積してきたノウハウを生かしつつ、品質を高めることにつなげることができているという。 外部で生産した基板を外観検査機で再検査できるのも、自らが基板製造や検査のノウハウを蓄積しているからこそ実現できるものだと説明する。今後、ノートPCの生産数量が増加すれば、本社工場において再びノートPCのメイン基板の生産することも検討していくことになるだろう。 基板実装工程では、最新機械への更新が、品質や効率性にも直結することになる。ノジマグループ傘下での新たな体制では、こうした生産設備への投資の拡大にも期待したい。
「VAIO SX14-R」の組み立て工程
最新モデルであるVAIO SX14-Rの組み立て工程では、「LCD(液晶ディスプレイ)部」と、さまざまな部品を実装する「キーボード部」でラインを別々に用意している。最終的に、両ラインからできあがってきたものを組み合わせて“完成”という構成だ。 ちなみに、従来モデルの「VAIO SX12」「VAIO SX14」では、LCD部、キーボード部に加えて「ベース部」の計3つで組み立てラインを組成していた。今回のVAIO SX14-Rはベース部に組み付ける部品がなくなったため、工程としては省かれている(後で組み上がった本体に取り付けるだけで済む)。 ブラック基調となった生産ライン VAIO SX14-Rの生産は量産試作を経て、10月21日から本格的な量産を開始しているという。この生産ラインで目を引くのは、工程全体がブラック基調となっていることだ。VAIO SX12/14のラインではシルバーの器具を使っていたのに対して、ブラックの器具を使うようになり、工程全体で“プレミアム感”が演出されている。 実はこれには狙いがある。VAIOはここ数年、法人向けビジネスを強化している。それに伴い、「安曇野にある本社工場を見学したい」という企業が増加しているのだという。今回の取材は11月11日の週に行ったのだが、この週は毎日、企業の見学があったそうだ。企業がPCの一括導入を検討する際に、工場の生産ラインを見学した上で、そのこだわりを知り、導入を決定するというケースも少なくないという。 「完成した製品そのものは品質が高く、きれいであるのは当然だ。しかし、それだけでなく、整然とし、きれいで、カッコイイ生産ラインで、PCが作られていることも訴求したいと考えた。VAIOは、生産ラインも製品の一部であると捉えている」と、工場の担当者は狙いを語る。 VAIOは「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」を商品理念に掲げる。これを生産ラインにもそのまま適用しているというわけだ。 ちなみに、最初に生産ラインにブラックの器具を導入し始めたのは、2022年の「VAIO Z」だ。この6月から生産を開始したVAIO Vision+の生産ラインにも、ブラックの器具を用いている。今後、安曇野の本社工場の生産ラインは順次ブラック基調にしていくそうだ。 LCD部の組み立てラインでは、6月から生産をしているVAIO Vision+で採用した新たな組み立て方法の経験を生かしているという。新たなカーボンファイバー素材の取り扱いやパネルの圧着作業、薄いベゼルの取り付けなど、約4カ月に渡って先行した経験がVAIO SX14-Rに生かされているのだ。 また、安曇野工場の特徴といえるのが、安曇野FINISHである。技術者が1台ずつ組み上げたPCを、人手による目視や官能試験、自動検査などにより、120項目以上の品質をチェック。「いいものを作って届けたい」という生産ラインの思いが、安曇野FINISHを支えているという。 ここからは、ラインごとに生産の様子を見てみよう。 LCD部のライン キーボード部のライン(LCD部との組み合わせも) 組み立て工程における検査