転換期を迎えたJ-REIT、米国の利下げが示唆する投資機会
米国が段階的に金利を引き下げていく動きになれば、米国10年債利回りが明確な低下基調となり、外国人投資家のJ-REIT投資が再度拡大する可能性が高いと期待される。
東証REIT指数は、8月上旬に日銀の利上げを受けて国内株価が急落した折に、大幅安となり、その後、株価が下落幅を取り戻すような動きになっているものの、J-REITの戻りは鈍い。過去3年のトータルリターンがマイナスになっているJ-REITを積極的に評価しづらいということだろう。ただ、過去の成績が悪いだけに、その利回りの魅力は増している。たとえば、J-REITファンドで最大の純資産残高3004億円の「J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」は、8月末時点の予想配当利回りが4.67%になっている。同ファンドは過去3年のトータルリターンがマイナス3.60%とマイナスに沈んでいるため、過去3年間で人気離散し、4000億円を超えていた純資産残高は1000億円以上減額している。
東証REIT指数ベースで、2024年8月末は予想配当利回りが4.6%と7月末の4.7%よりやや低下したものの、これは、月末ベースではコロナ禍でREIT価格が急落した2020年3月末時点の4.9%に匹敵するほどの高い利回りになっている。米国の10年債利回りは、すでに3%台半ばに低下しており、外国人投資家からみてのJ-REIT市場は魅力的な利回り水準になっていると考えられる。
今後、日銀は国内の金利を引き上げる意向を持っているが、物価指数などの経済指標に加えて株価の動向など市場の動きにも配慮した政策変更になる見通しだ。7月末に政策金利を0~0.1%程度としていたものを0.25%程度に引き上げたが、これが1%を超えるような水準になるとは考えられていない。緩やかな金利上昇が見込まれるため、J-REITにとっては賃料の上昇など、底堅い景気を背景として経営環境は良好な状態が維持されると考えられる。
年4%を大きく超える配当利回りがあり、経営環境も最悪期を脱して復調基調にあるとすれば、長らく低迷してきたJ-REIT価格の上昇も期待されよう。投資環境が大きく変わりつつあるJ-REITとJ-REITファンドに注目したい。(グラフは、東証REIT指数と米国10年国債利回りの推移)
ウエルスアドバイザー