「平時のつながり」「障がい者も一緒の視点」が大切 「アゴラ23」シンポで大地震への備えのあり方議論
大規模災害時にさまざまな障がいを抱えた人や高齢者を取り残さず、どのように健常者と同じように避難させるかについての関心は少しずつ高まっている。しかし、自然災害の中でも突然揺れ始める大地震の時に具体的にどうすべきかについての課題は多い。
日々「社会の中で生きる」
公開シンポジウムでは「レット症候群」という難病を抱えた高橋桃子さん(26)と母親の実和子さんが、IRIDeSの栗山進一所長に伴われて登壇した。
IRIDeSは東日本大震災の約1年後に設立された。工学、理学、人文・社会科学、医学の各分野のほか、防災実践の研究者も参加する世界でも例を見ない、総合的な防災研究機関。栗山所長自身は内科医だ。この研究機関は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念を引用して災害でも「誰一人取り残さない」ことを研究理念にし、その理念を追求するために「最も困っている人」からいろいろ話を聞いて防災対策に役立てている。当事者として最初に話を聞いたのが高橋さん母娘だったという。
桃子さんは生まれてからずっとレット症候群と闘ってきた。歩行などの運動や筋緊張などさまざまな不自由を抱えながら頑張っている。言葉もほとんど発することができず、コミュニケーションは手や表情などを通じてだった。それでも実和子さんと担当医師ら周囲の人に支えられて「日々、社会の中で生きる」ための挑戦を続けてきた。
宮城県は障がい児も通常学級に通う「共に学ぶ教育」を掲げてきた。障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが地域の小中学校の通常学級で学ぶ教育が目標だ。桃子さんは小学2年から中学を卒業するまでそのモデル授業で学んだ。「同じ年代の子どもたちとふつうに触れ合わせたい」という実和子さんの強い思いがあった。
18日間、飢えをしのぐ
大震災があった2011年3月11日の午後2時46分。高橋さん母娘は5階建ての自宅マンションの5階にいた。揺れ止めをしていた家具が動くほどの激しい揺れ。実和子さんは横になっていた桃子さんに覆い被さりながら揺れから守ったという。建物被害が少なかったために避難所に行かなくて済んだ。だが、それから大変な日々が続いた。