10億人が使う通信アプリ「テレグラム」CEOはなぜ逮捕されたのか?
通信アプリのテレグラム創業者でCEOのパベル・ドゥーロフが、現地時間8月24日にフランスで逮捕された。現在39歳で、ドバイを拠点とするロシア人のドゥーロフは、24日夜にアゼルバイジャンからパリのル・ブルジェ空港に到着した際に逮捕された。 この逮捕は、9億5000万人以上のユーザーを抱えるテレグラムのコンテンツ監視体制に対する調査の一環として行われたもので、フランス当局は、このアプリが薬物や児童の性的画像の取引き、詐欺などの犯罪に対する予防策をとらず、法執行機関の捜査に適切に協力していなかったと考えていると報じられている。 25日時点で、フランスのどの機関がドゥーロフを拘束したのか、また彼がどのような罪に問われているのかは明らかにされておらず、パリ検察庁はニューヨーク・タイムズ(NYT)紙に対し、調査中の案件であることを理由にコメントを控えた。 ドゥーロフの弁護士はロシアのメディアに対し、フランス当局の措置を厳しく非難し、ドゥーロフの逮捕が「薬物の輸送に使われた車のメーカーが、そのことを非難されるようなものだ」と述べたと報じられている。 フランスのロシア大使館は、X(旧ツイッター)の投稿で、フランス当局にドゥーロフの逮捕理由の説明を求めたが、まだ回答が得られていないと述べた。 ロイターは、ドゥーロフが今後起訴される可能性があると、現地メディアを引用して報じた。フランスのAFP通信は、彼が今後の数日以内に裁判所に出廷する予定だと伝えた。 ■保有資産2.2兆円 フォーブスは、ドゥーロフの保有資産を約155億ドル(約2兆2300億円)と推定しており、25日時点で彼は世界で150番目に裕福な人物とされている。 ドゥーロフがロシア最大のソーシャルネットワーク、Vkontakteを設立した数年後の2013年に立ち上げたテレグラムは、ワッツアップやシグナルなどのアプリと競合するメッセージングプラットフォームで、エンドツーエンドで暗号化されたメッセージを提供している。このアプリのメッセージは、送信者と受信者以外にはアクセスできない仕組みとなっている。 テレグラムはまた、2022年にロシアがウクライナに侵攻した後に、重要なコミュニケーション手段となり、ロシアおよびウクライナの指導者たちも利用している。このアプリは、コンテンツ監視体制の緩さが指摘され、物議を醸しているが、ドゥーロフは、これを言論の自由とプライバシーを守るための措置だと主張している(テレグラムは、テロリストグループをブロックしていると述べている)。 ロシアで生まれたドゥーロフは、2014年にロシアを脱出したが、NYTはその理由について、ウクライナの活動家のデータを提供する、もしくはVkontakte上の反対派コミュニティを閉鎖するというロシア政府からの要求に従うことを彼が拒否したためだと報じている。 ドゥーロフは、フランスとアラブ首長国連邦の市民権を持っており、テレグラムは現在、ドバイを拠点としている。ロイターによると、テレグラムはロシア当局からのユーザーデータへのアクセス要求に応じなかったことを受けて2018年にロシアで禁止された。しかし、この禁止令は2020年になって解除されたという。 ドゥーロフの逮捕は、他のソーシャルメディアの経営者からも批判を招いている。イーロン・マスクは、ドゥーロフがXを称賛する動画を#FreePavel(パベルを解放せよ)というキャプションを添えて投稿した。また、保守派に人気の動画共有サイト、Rumble(ランブル)のCEOを務めるクリス・パヴロフスキーは、フランス当局がドゥーロフを逮捕したことについて「一線を越えた」と表した。
Molly Bohannon