なぜ物価高で国民生活が大変でも政府・財務省は絶対に消費税を下げないの?「10年間で税収全体では26.3兆円増えて1.6倍に…」生島ヒロシ×岩本さゆみ
◆バブル崩壊後の経済低迷 岩本 日本のバブル崩壊直後はひたすら経済が縮小するような状態となり、そのあおりでその後の経済成長も低迷し、企業からも個人からも税収が思うように上がってこない時期が長く続きました。 そのため、政府・財務省としては高齢化が加速する時期が重なったこともあり、社会保障費の増えるスピードを考えると、減税して税収を落とすようなことはしたくない、といった意向が強く働いてきたのだと思います。 生島 なるほど。 岩本 しかし、このところの税収は、当初予算と比較して2021年度は9.6兆円、2022年度は5.9兆円の上振れとなっています。 世界的なインフレの流れと同様に、日本経済も過去30年とフェーズが変わり、マイルドな経済成長やインフレをともなっての税収増が期待できる段階になってきたととらえることもできると思います。そういった発想の転換があるとよいのですが。
◆消費税の税収は大きく増加 生島 それなのに、この間ずっと、ひたすら増税や社会保障費の引き上げ一辺倒で、庶民の負担が増えるばかりです。 岩本 そうですね。令和5(2023)年度の租税及び印紙収入概算(一般会計当初予算)の合計は69.4兆円で、その8割を所得税、法人税、消費税が占めています。なかでも消費税の23.4兆円は33.7%と最も割合が大きいです。 遡ること10年前、消費税が5%だった平成25(2013)年度の当初予算は43.1兆円で、当時もやはり消費税・所得税・法人税で収入の8割を占めていましたが、消費税収は10.6兆円で比率としては24.6%でした(図表)。 生島 この10年間で、消費税の税収はそんなに増えていたんですか。 岩本 はい。10年で税収全体では26.3兆円増え、1.6倍となりました。この間、日本の経済規模も拡大しましたので、税収もその分大きくなるというのはわかるのですが、それぞれの税収が同じような増加率で増えているならまだしも、内訳を見ると所得税収は1.5倍、法人税収は1.7倍なのに、消費税収だけが2.2倍に伸びています。 この10年で消費税収の増加が大きく、つまるところ庶民の負担が大きくなった証左といえるのではないでしょうか。 ※本稿は、『日本経済 本当はどうなってる?』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
生島ヒロシ,岩本さゆみ
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