「夢の中にいるような感覚」――すゑひろがりず、アイドル的ブレイクの理由
すゑひろがりずは、和服に身を包み、小鼓と扇子を片手に、古風な言葉遣いの「狂言風漫才」を持ちネタにしている。そんな彼らは昨年末、このトリッキーな漫才で『M-1グランプリ』の決勝に進出。それ以来、着実に人気を伸ばしている。 最近では彼らを追いかける熱心な女性ファンも増えているという。イケメンでもなければ若くもない中年既婚男性2人が、いまやお笑い界でも有数のアイドル的な人気を誇っている。その人気の秘密に迫る。(取材・文:ラリー遠田/撮影:栗原洋平/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「ずっとバイトをしないと生活できなかったんですけど、バイトはもう辞めました。ありがたいことに、収入は元の10倍以上になってます」(南條) 仕事が増えただけでなく、人気も一気にうなぎのぼりになった。現在ではライブのオンラインチケットが一気に3000枚売れるほどだ。突然の人気ぶりに喜びよりも戸惑いが勝っている。 「本当に1ミリも想像していなかったですね。まだ飲み込めてはいないです。どういうことなんやろうってずっと感じてます」(南條) 「夢の中にいるような感覚ですね。覚めないでほしいなって」(三島) そう思うのも無理はない。『M-1』に出る前の彼らは、自他ともに認める不人気芸人だった。ライブでは観客に向かって「僕らのことを見に来た人ー?」と言って手を挙げさせ、1人も挙がらずに「おーい!」とツッコむのが定番ネタになっていた。人気を得た今でも本人たちに浮かれる様子はない。 「14年間ずっと人気がなかったですからね。これぐらいじゃ勘違いしたりはできないです」(南條) 「以前はライブに来ているお客さんも僕らには全く興味がなくて、ネタやってるときに下向いて携帯いじったりしてましたからね」(三島) そんな彼らがいまやアイドル的な扱いを受けている。女性ファンからの熱の込もったファンレターが殺到し、各種グッズもバカ売れ。一部のファンからは「すゑ様」の愛称で親しまれている。そんなファンの熱狂ぶりに対しても「おっさん2人がいじられてるだけですよ」「ただのバブルだと思います」と、あっさりしたものだ。 「後輩にもめちゃくちゃいじられてますからね」(三島) 「『anan』から取材が来たときにはめっちゃビックリしましたし、最近は(アイドル雑誌の)『Myojo』からも来ました。ついに企業の人も僕らのことをいじりだしてるんですよ」(南條)