不祥事で報酬減の事前契約広がる 役員と企業、透明性を評価
将来、不祥事を起こしたら報酬を返します―。こうした契約を役員が企業との間で事前に結んでおく動きが、徐々に広がりつつある。先行する欧米では主に決算訂正や業績見通しの誤りといった不祥事に活用。問題を起こした後の自主返納より透明性が高いとされる。ハラスメントや異性問題など数値化しにくい不祥事にも適用している日本では、算定基準をどう設定するのかという課題が指摘されている。 「不適切行為は到底容認し難く、マルス・クローバック条項を適用し、月額報酬、賞与、株式報酬の一部返還、没収を行う」。2023年12月、ENEOS(エネオス)ホールディングス社長解任を発表した記者会見で担当者がこう説明した。解任の理由は懇親会で女性に抱きついたこと。 マルス条項は、今後支給する報酬の減額、取り消しを規定。クローバック条項は、既に支給した報酬を強制的に返還させる制度だ。 欧米では役員による過度な利益追求や不正の抑止につながると評価されており、米国では主要な上場企業にクローバック条項の設置が義務付けられている。