都内の住宅密集地の二世帯住宅。隣家が迫る旗竿地で防火対策も必要…難題だらけの家づくりに立ち向かった建築家のアイデアとは
ここは東京のとある住宅密集地。四方に隣家が迫る旗竿地ながら、室内に入ると吹き抜けの土間を中心に光と風が通る気持ちよい空間が広がります。建築家・齋藤和哉さんが手掛けた住宅です。都市型住宅でも家族がほどよくつながりながら、おおらかな暮らしを享受できる建築家ならではのアイデアに注目です。 【写真でチェック】狭小の旗竿敷地に立つ二世帯住宅。明るい家にできた理由とは?
吹き抜けの土間と東西の庭が自然を呼び込む住まい
南面道路から路地を北に進むこと10m。四方に隣家が迫る、210㎡の旗竿地に立つ住まいは、室内に入ると吹き抜けの土間を中心に光と風が通るおおらかな空間が広がります。 建築家の齋藤和哉さんが独立当初に設計したご主人の実家で空間の心地よさを実感し、依頼に至ったご夫妻。奥さまの母親と共に暮らす新居には、ご主人がほぼテレワークのため「互いに気を使わない距離感」を望んだといいます。 この住まいでは、窓から天窓に空気が抜けるパッシブと、機械によるアクティブの両方で空気を調節。ダイキンの「外気処理換気システムサラビア」は、屋外の空気を除湿し、温度調節してから給気する仕組み。冷房時に除湿しても寒くなりすぎず省エネに寄与しています。
“都市のなかの公園のような住宅”をコンセプトに据えたプランを齋藤さんはこう語ります。 「東と西の庭や室内を高さ5.7mの“囲い”で包む構成です。密集地で準防火地域にあるこの建物では延焼ラインで防火設備にしなければならない部分が大きくなりますが、この囲いが防火壁の役割を果たします。さらに周囲の視線や直射光を遮り、内部を穏やかな温熱環境に保つのです」 断面は、吹き抜けの土間を中心に東西のボリュームに分かれた形。1階は、東側の庭に面した母親の部屋と玄関。さらに土間を挟み、17.5畳のダイニングキッチンと浴室が西側の庭に開いています。 2階は東側に主寝室と子供室、西側に夫妻のリビングと書斎に振り分け、生活サイクルが異なっても気兼ねなく暮らすことができます。 〈写真〉 北向きの天窓から家中に光が回り込む。気密・断熱性の高い天窓は、日本ベルックスの「VS電動開閉式・FSタイプ連窓」。左側のリビング奥には洗面室などが連続している。
内と外が交互に隣り合う住まいは建具を開け放てば一体となり、多様な過ごし方が可能な一方で、全館空調や太陽光発電も設置されています。家族がほどよくつながりながらオープンな暮らしを享受できる、備えある都市型住宅を実現しています。