古い企業の現実は変わらない――「昭和」「理不尽」批判された秘書検定、それでも貫く「今の考え」
都内のIT企業で役員秘書を務める田名網美代子さんは、「この1年、支障なくリモートで仕事ができている」と話す。IT化により、スケジュール管理はツールを使用して効率的に進められるようになった。その代わり、コロナ禍で増えていくツールは、上司の疑問や要望に答えられるよう必要に応じて先回りして習得する。 秘書に求められるスキルは、変化を続けている。検定の内容も、時代とともに変わってきているのか。検定協会の保坂理事長はこう話す。 「業務やマナーは多少変化があるので、試験問題は毎年アップデートしています。ただ、検定の根底にある人としての考え方や、人に与える印象の良しあしは根本的にはそう変わりはないですから、今の考え方は貫いていきます」 目指しているのは、「人柄育成」だ。 「ビジネス社会において、どういった表現や行動を相手に印象づければ仕事がやりやすくなるのか。多くの人は明るい人を好み、素直に受け答えができる人を好みます。明るいと思ってもらうには、表情だったり、声の出し方や話し方だったり。素直だと思ってもらうには、言葉遣いや所作、態度、振る舞いですね。それがきちんとできて、初めて感じのいい人柄だと万人に思ってもらえる。私どもの検定を受けることで、これから出ようとする社会でどういった対応が求められるのか、社会を垣間見ることができるので、いい勉強になるのではないでしょうか」 就職活動前に取得する定番の検定として知られる秘書検定。これまで受験した770万人超のうち、7割以上が学生だ。今年の3月から、2級と3級はテストセンターでオンライン受験もできるようになった。前出の曽和さんは、コロナ禍だからこそ、就職活動に秘書検定が生きる可能性を指摘する。 「秘書検定においては、資格の有無よりも身になっているかが重要だと思っています。それは必ず所作に表れる。ですが、コロナ禍のオンライン面接では、対面のときより得られる情報が少なくなっています。そういう意味では、採用する上で秘書検定がオンラインでは見抜けない部分を担保する安心材料になるかもしれません」