「プールの水で、水いぼがうつる」は間違い! 夏に患者が増える「水いぼ」について、小児科医に聞きました
水いぼの罹患率は5~10%前後といわれています
水いぼは身近なトラブルのように思われますが、実際はどのくらいの子どもたちが経験するのでしょうか。ひどくなった場合はどんな治療をするのでしょうか。気になることを黒澤先生に聞きました。 ――そもそも「水いぼ」とは、どんなものなんですか? 水を含んだような光沢があるから「水いぼ」と呼ばれるのでしょうか? 黒澤先生(以下敬称略) 水いぼとは伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)ウイルスの感染によってできる、白っぽく、時には赤みのある小さないぼのことです。水いぼという名称の由来はわかりませんが、いぼが液体で満たされていることから、そう呼ばれるようになったのかもしれません。 手のひらと足の裏以外の全身にできることがあり、わきのした、ひじやひざの裏側など、肌のやわらかい部位にできることが多いです。直径1~3ミリメートルくらいです。つぶれたいぼを触った手で体のほかの部位やほかの人に触ることで、目に見えない小さな傷などに感染し、またいぼができます。 ウイルスに対する免疫ができると自然に軽快し、ほとんどの場合、数カ月~1年ほどで治ります。とくに治療は必要ないケースがほとんどですが、見た目が気になったり、かゆみがある場合は、まれに皮膚科でいぼを取る治療をすることがあります。 ――夏にかかる子が多いのですか? また、感染力は強いのでしょうか? 黒澤 たしかに、夏に受診する子が多い印象があります。理由としては薄着になることでほかの子どもと皮膚が接触して感染しやすくなる、あるいは、薄着になったため以前あったものに気づきやすくなるなどが考えられます。 水いぼの罹患(りかん)率は5~10%前後といわれています。10~20人に1人なので珍しいものではありません。ウイルス性疾患なので免疫ができればかかりにくくなり、免疫を持っていない小学校入学前くらいの年齢の子がかかることが多いです。
水いぼは、プールの水ではうつりません。はと麦茶は気休め程度に
――子どもに水いぼができた場合、かゆみや痛みはあるのでしょうか? 黒澤 基本的にかゆみ・痛みはありません。 ただ、肌が弱いと、水いぼのウイルスが増殖しやすいです。さらに肌が弱いともともとかゆみを感じることが多く、ひっかくことで肌のバリア機構を低下させたりウイルスを広げたりするものと思われます。つまり、弱くてかゆい肌があることで水いぼが広がりやすくなります。 また、水いぼは肌の出っ張りになっているため、かゆくなくても気になってかき壊してしまうこともあるようです。単にかき壊しただけでは痛み・かゆみはありませんが、かき壊してつぶれたいぼに触れると、ほかにうつりやすくなるので注意が必要です。水いぼのように見えてもかゆみがある場合はほかのトラブルかもしれませんし、痛みが出ている場合は細菌感染症の併発(とびひなど)を考える必要があります。 ――水いぼができたら、スイミングスクールのレッスンや保育園のプール遊びは控えたほうがいいのでしょうか? 黒澤 水いぼについては「プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けてください。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう※」とされています。 ただし、施設ごとのルールもあると思うので、問い合わせをしてそれに従うといいでしょう。 ラッシュガードや服装、ばんそうこうで患部を覆うことは、感染予防として一定の効果が期待できますが、水いぼの場合、とびひなどと異なり、治るのに時間がかかることが多いです。その間に覆った部分があせもなどになる可能性もあるので、必須ではないです。田中さんのケースのように、施設のルールがあれば、その施設を利用する時間だけそれに合わせるといいでしょう。 ――イネ科の植物である、はと麦。種子はヨクイニンという漢方薬に使われます。はと麦茶は、はと麦の実を焙煎(ばいせん)したもの。ノンカフェインで子どもでも飲めますが、水いぼに効果はあるのでしょうか? 黒澤 たしかに、水いぼの治療として漢方薬のヨクイニンが使われることがあります。ただし、これはほかに治療法がないからで、実際に使ってみても劇的な効果があるわけではありません。 はと麦茶にも有効成分が含まれていますが、濃度としては薄いのでさらに気休め程度と思ったほうがよさそうです。田中さんの娘さんのように飲み慣れないとイヤがる子もいるでしょう。無理に飲ませる必要はありません。 ※学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会の統一見解より 「皮膚の学校感染症について」 監修/黒澤照喜先生 文/たまひよONLINE編集部 「水いぼは、長期戦ではありますが最後には必ず治る病気です」と黒澤先生。水いぼは、つぶれたいぼを触った手などから感染が広がるので、無理やりつぶすのは厳禁。プールの水ではうつらないので、基本的にはプールに入っても構いませんが、スイミングスクールのレッスンや保育園のプール遊びに参加するかどうかは施設のルールに従って。とくに保育園のプール遊びでは、子ども同士で遊具やタオルなどを共用しやすく、水いぼが治るまで参加を控えるルールになっていることも。はと麦茶を飲ませるのなら、効果を期待しすぎず、気休め程度に考えるといいようです。子どもの体に水いぼなどの発疹ができるとママ・パパは心配しがちですが、まずはあわてずにかかりつけの先生を相談するといいでしょう。 ●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。 監修者 【小児科医】黒澤照喜 先生 PROFILE:両国キッズクリニック副院長、東京ハート会理事長。小児科医、医学博士。東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院小児科、都立小児総合医療センター、わだ小児科・循環器内科医院などを経て、2022年より現職。3人のお子さんのパパ。
たまひよ ONLINE編集部