ラリージャパンで完走できなければ、2025年WRC参戦はなかった……勝田貴元が明かす厳命「来年は”勝ちに行っていい”と言われるように」
■リタイアは絶対に許されない
絶対にリタイアが許されない……そんな中、2日目の旧伊勢神トンネルSSではパンクに見舞われ、さらに3日目の恵那SSではスピンしてしまうシーンもあった。 「パンクは起きちゃうんで仕方ないですが、スピンは本当に予測していなかったので、かなりヒヤッとしました。その時は頭によぎるモノがありました」 「ちょうど良い線っていうのがすごく難しくて、全開でプッシュしている方がよっぽど楽なんです。キツいというか、すごく糧になる、勉強になった1週間だったなと思います。強くなれた気がします」 最終日には、ヒョンデからマニュファクチャラーズタイトルを奪うために、ヤリ-マティ・ラトバラ代表から攻撃指令が勝田に対して出された。しかしそれでも、完走するのは絶対条件だったと、勝田は明かす。 「日曜日の最後だけですね。(オット)タナク選手がクラッシュしてしまったことで、僕らにチャンスが出てきたので、パワーステージのひとつ前のサービスのところで、攻めていいよと言われました」 「いっていいけど、帰ってきてという指示だったので……捨て身で攻めていいということではありませんでしたから、ちょっと難しかったです。絶対完走という条件は変わっていなかったので、自分の走りはちょっとぎこちなかったかもしれません」 「ヤリ-マティはそう(何かあっても責めない)と言ってくれましたけど、とはいえなんで。彼が言ってくれることは心強いですが、実際に何かあった場合のことは、やっぱり頭をよぎってしまいます。そういう意味では、最後まで難しい1週間だったと思います」 この2戦を経たことで、ラリーに挑む際のアプローチは変わってくると、勝田は断言する。 「間違いなく変わると思います。この最後の2戦、自分のアプローチというか、考え方は明らかに変わったと思います」 「前半戦は、すぐにでも勝てないと必要とされなくなってしまうと思い、速い選手たちの間に割って入り、その中で上がってこないと、この世界では生き残れないと、自分で自分にプレッシャーをかけすぎていました」 「焦っているつもりはないんですけど、勝たなきゃと思っている時点で焦っていたんですよね。そこが自分の一番のミスでした」 「でもエンジニアたちは、僕のスピードのことは理解してくれていて、何も証明する必要はなかったんです。それを犠牲にしてでも安定して走り、4番手とか5番手で帰ってこれるかどうかを見ていたと言われた時に、ギャップが大きかったんだなと思いました」 「スピードは理解してくれているということが分かったことで、落ち着いてラリーを戦えると思います。そんなことを意識しながら、特に来年の前半戦は戦っていきたいです」