三井不動産 VS 三菱地所。徹底比較して見えた“稼ぎ方”の違い
三菱地所といえば「丸の内」
次に三菱地所はどうでしょうか。三菱地所の場合は、コマーシャル不動産事業56%、住宅事業27%でこの二つで合計8割強になっています。その後、海外事業12%と続きます。 具体的な事業内容は以下のとおりです。 コマーシャル不動産事業:オフィスビルを中心に、商業施設・物流施設・ホテル・空港などのあらゆるアセットタイプの開発・賃貸・運営・管理事業、駐車場事業、地域冷暖房事業等 住宅事業:マンション・戸建住宅等の建設・販売・賃貸・管理・リフォーム・不動産仲介、不動産受託販売、ニュータウンの開発、余暇施設の運営、注文住宅の設計・請負 海外事業:海外における不動産開発・賃貸・管理運営 三菱地所は、「丸の内の大家さん」と言われるほど丸の内での存在感は大きく、コマーシャル事業内に含まれる丸の内事業だけで売上高全体の25%も占めます。 一方で、見方を変えると残りの75%は丸の内以外から売り上げを上げているということであり、売上高の観点からは決して丸の内に頼った事業構成になっているわけではないことがわかります。 冒頭で紹介した日本一高いビル・Torch Towerは、三菱地所の売上のメインを構成するコマーシャル不動産事業だと考えられます。 ここまでみてきたように、三井不動産と三菱地所は、セグメントの分け方が違うためそのまま比較はできませんが、両者をざっくり比較すると売上の構成は次の図のように整理できます。 これらの事業ポートフォリオの構成の違いが利益率の違いの一つになっていますが、具体的にそれぞれの事業の利益率はどうなっているのでしょうか。 次に2024年3月期の決算短信から詳しくみていきましょう。
オフィスビルなどで高い利益率…三菱地所
上の図は、三井不動産のセグメント別の利益です。並び順は左から売上高の多い順にしています。 賃貸と分譲の利益率は20%を超えている一方、マネジメントと施設営業は15%以下です。ここから利益率の観点での稼ぎ頭は賃貸と分譲ということがわかります。 続いて三菱地所はどうでしょうか。下の図は三菱地所のセグメント別利益率です。 ここで目を引くのはコマーシャル不動産事業の約25%という利益率の高さです。 三菱地所のコマーシャル不動産事業はあらゆるアセットタイプにおける開発・賃貸・運営・管理事業を含みます。これらが総合的に高い利益率を誇っていると言えます。 筆者は本記事を書くまでは、三井不動産は東京の日本橋、三菱地所は東京の丸の内に強みを持っている会社という区分けをぼんやりと持っておりました。 これはある意味事実ではあるのですが、先述したとおり、三菱地所全体の売上のうち、丸の内事業の売り上げに占める割合は25%であり、残りの75%は他の事業から収入を得ています。 そのため、売上に占める丸の内事業の影響はそれほど多くないように見えていても、この丸の内事業はコマーシャル不動産事業に含まれており、利益率は約25%と非常に高くなっています。 このコマーシャル不動産事業約25%と海外事業約30%の利益率の高さは三井不動産と比較しても圧倒的と言えます。
村上 茂久