三井不動産 VS 三菱地所。徹底比較して見えた“稼ぎ方”の違い
大手不動産デベロッパーの5社の決算短信が5月に発表され、不動産業界の景気の良さが鮮明になりました。 【全画像をみる】三井不動産 VS 三菱地所。徹底比較して見えた“稼ぎ方”の違い その中でも今回の原稿では、売上高で業界1位の三井不動産と、2位の三菱地所を徹底比較します。 大規模な開発でニュースを賑わせている両社。三井不動産は、読売新聞グループなどともに11社で総事業費9000億円もかけて、築地市場跡地に5万人も収容できる多目的スタジアムの開発を発表しました。 他方、三菱地所は、東京駅日本橋口前にて高さ385メートルで日本一の高さになる予定の「Torch Tower」を建設中です。 比較分析した結論から言ってしまうと、両社の経営戦略には明確に大きな違いがあります。 三井不動産は「不動産の売却益」であるキャピタルゲインを重視し、一方の三菱地所は「不動産の賃料収入」であるインカムゲインを重視しているのです。 なぜこのような違いが生まれているのか、2回に分けて分析していきたいと思います。 記事後編:『2030年、不動産トップの座は?三井不動産 VS 三菱地所…長期計画を読み解く』
売上高では三井不動産が上回るが…
下の図は、三井不動産と三菱地所の2024年3月期の売上高と営業利益を比較したものです。 売上高では三井不動産が三菱地所の1.6倍近くもあり大きく上回っている一方、営業利益率で見ると、三菱地所が三井不動産を3割も上回っています。 図にあるように、同じ大手不動産デベロッパーでも利益率の違いが出てくる主な理由は、扱っている不動産の事業(ポートフォリオ)と儲け方が違うためです。 まず三井不動産の売上高の構成をみてみると、次のようになります。 売上の特徴としては、オフィスビルや商業施設等の賃貸が34%、マンション等の分譲が26%で、この二つで全体の60%を占めます。これらにマネジメント20%を加えることで、売上高全体の80%ととなり、その後、施設営業と続いています。 有価証券報告書によればそれぞれの定義は次のとおりです。 賃貸:オフィスビル及び商業施設の賃貸。内訳はオフィス55%、商業35%、その他10%となっている。 分譲:戸建・中高層住宅等の分譲。内訳は国内住宅が50%、投資家向け。海外住宅等が50%。 マネジメント:賃貸事業における管理・清掃・保守業務等。プロパティマネジメント業務が75%で、仲介やアセットマネジメント業務が25%。 施設営業:ホテルやスポーツエンターテイメント。ホテル・リゾートが72%、スポーツエンターテイメントが28%。 冒頭に記載をした築地市場でのスタジアム開発は施設営業にあたると思われます。ニュースのインパクトとしては大きいですが、実は三井不動産の売上に占める施設営業の割合は8%ほどなのです。 他にも連結子会社である株式会社東京ドームによる、東京ドームシティを中心としたスタジアム・アリーナ事業も行っています。 上記を踏まえると、三井不動産の中核はオフィスビルや商業施設の賃貸とマネジメント事業は実質セットになっていて、これらとは別に戸建てや・中高層住宅等の分譲事業を行っていることがわかります。