なぜラグビー日本代表は若手抜擢にこだわるのか? 大学生にチャンス拡大、競争の中で磨き上げられる若き原石
選手層の拡大に苦戦。若手のチャンスを増やすのが最善手
そもそも現日本代表は、長らく選手層の拡大に苦慮している。 2015年のワールドカップ・イングランド大会まではジョーンズの若手登用、2019年の日本大会までは国際リーグのスーパーラグビーへのクラブ派遣で実力者が経験値を積む流れを作っていたものの、スーパーラグビー事業は2020年までに撤退。実力者がステージアップを図る機会を減らしていた。 同年以降のパンデミックにも足を引っ張られた。 他の強豪国と比べ、厳しい出入国制限が敷かれていた。それもあってか2020年には、一つもテストマッチ(代表戦)がおこなえなかった。その年は、当時の代表候補が個別で走り込みをするにとどまった。ジョセフ体制を継続させて臨んだ2021年は、常連組を主としたチームの再構築に時間を割かざるを得なかった。 2022年には有力選手によるチームを二つ同時に運用するなど工夫を凝らしたが、2023年のフランス大会ではスコッドの平均年齢を「28.7」としていた(追加招集を含む)。 さらに第2次ジョーンズ政権2期目の2024年に至っては、そのフランス大会まで日本代表を引っ張ったメンバーの多くがケガの治療やオーバーホールのため活動を辞退。大幅な若返りは避けられなかった。 ジョーンズはこのように語る。 「2027年のワールドカップ(オーストラリア大会)でトップ4を目指す。それにはチームの再構築が必要です。2023年のメンバーは年齢を重ねている。若手を育てなくてはいけない」 中長期的な視野に基づいても、かつ目下の事情を鑑みても、若手のチャンスを増やすのを最善手としているわけだ。その延長線上で、複数の大学生に白羽の矢が立った。
大学生8人が代表や準代表の活動に参加して汗を流した
6月からのサマーキャンペーンでは、正スコッド、練習生の立場で計8人が代表や準代表の活動に参加した。8月下旬から参戦して準優勝に終わるパシフィック・ネーションズカップへも、計4人が事前の宮崎合宿で汗を流した。 さらに今春から、ジャパンタレントスコッド(JTS)というプログラムを立ち上げている。代表首脳陣が将来性のある大学生を定期的に集め、身体作りや代表の目指すプレースタイルについて啓蒙する。いわば予備校のような装置だ。 6月には、日本代表が合宿をしていた宮崎で第2回目のJTSを実施。ちょうど代表の主将に任命されていたリーチ マイケル、引退したばかりの田中史朗といったレジェンドたちが対面でスピーチした。 リーチはパワーポイントを用意して自主的に計画して動く勧めを解き、田中は対話主体でコミュニケーションの重要性を訴えた。 一時、「アマチュア」と区分されてきた大学生がプロ選手の多いナショナルチームに混ざる効果は、多岐にわたる。まず、当該の選手がグラウンド内外で知見を広げられる。