なぜラグビー日本代表は若手抜擢にこだわるのか? 大学生にチャンス拡大、競争の中で磨き上げられる若き原石
「矢崎由高は今後、30~40キャップ重ねる可能性がある」
早稲田大学2年の矢崎由高は、6月22日から非代表戦を含む6試合に続けて先発。9月に大学の方針でナショナルチームを離れるまでの間、「ボールキャリー(突破)のところ、オフ・ザ・ボール(ボールを持たない間)のコミュニケーションが少しずつよくなってきたかなと。一方でフィジカル(の劣勢)、スキルのミスが露呈。少しずつ直していきたいです」と、自らの強みが通じること、世界で戦うために伸ばすべきところを整理できた。 ジョーンズの見立てはこうだ。 「矢崎は今後、2027年までに30~40キャップ重ねる可能性がある。そう思うと、未来が怖いくらいの存在です」 7月までのサマーキャンペーンに参加した早大主将の佐藤健次も、出番こそ限られたものの刺激を受けた。先輩戦士の一挙手一投足に触れ、自らの行動を変えられた。 「プレーではボールを持っていないところの動きの質が上がりました。それ以外では食事、睡眠、身体のケアのすべてで意識が高くなりました」 ホテルでは、今年初代表にしてリーダー格の原田衛と同部屋となった。自身と同じフッカーの位置でレギュラー候補となっている原田には、驚かされた。 「衛さん、20時40分くらいにはもう寝ていました」
競争の中で磨き上げられていく若き原石
選出組のロールモデル化もメリットの一つだろう。永友洋司ナショナルチームディレクターは言う。 「エディーは、ここ(代表)に呼んだ選手を育てると同時に、彼らが各大学に帰って(周りを)引っ張ってほしいとも話しています」 JTSでリーチや田中の話を聞いた京都産業大学2年、石橋チューカは「自分の強み、弱みを知り、どんなトレーニングをしたらよりトップになれるのかを常に考えながら努力すること(の大事さ)を学びました」と話す。2月の代表候補合宿にも加わりパワーで課題を感じたことで、段階的にサイズアップを図ってもいる。 京産大は複数選手を代表やJTSに輩出している。廣瀬佳司監督は認める。 「練習へ取り組む姿勢、トップ選手が何をやっているかを学んで帰ってきてくれて、チームにいい影響を与えてくれています」 教わる側はもちろん、教える側にも刺激があるようだ。学生の混ざる日本代表の動きを見つめるスタッフの一人は、この主旨で呟いた。 「大学生が入ることで、リーグワン(国内最高峰)の選手も『しっかりプレーしなきゃいけない』と気を引き締めているような」 新鮮なスコッドを組むジョーンズは、質問をされたタイミングによっては「日本代表でプレーできる可能性のある選手は常に探している」といった主旨でも語る。今後は現在辞退しているワールドカップ経験者の復帰、これから代表資格を得る海外出身者の抜擢も見られるかもしれない。 つまりいまの若者は、期待されながらもやがて競争心を煽られてゆきそうなのだ。 次なるフェーズではどんな物語が生まれるだろうか。 <了>
文=向風見也