こんなに人に恵まれたバンドがダセえわけがない――メジャーで一度はクビにされても今や武道館3DAYS、SUPER BEAVERが語る人との縁 #なぜ話題
買い物のとき、今でもバイト代で換算してしまう
日々の生活はハードだったが、充実していた。渋谷は振り返る。「生活的には大変だったし、貧乏暇なしという言葉のとおりアルバイトとライブに忙殺されていましたけど、メジャーのときの経験があるから自分たちでちゃんと舵を取れたし、やりたい音楽がつくれて、好きなライブに出られて。超絶マイナススタートだったから些細なことでもうれしかったし、楽しかったですね」 その一方で、彼らはまたしてもスタッフとの不幸な出会いがあったせいで多額の借金を抱えていた。それを完済したのは、新たなマネジメント会社に所属したのち、2015年11月に赤坂BLITZで開催した満員御礼のワンマンライブのときだった。それまで事務所が彼らの借金の肩代わりをしていたが、ここからついにメンバーに給料が支払われるようになったのだ。
「もらえる給料の額を見たらバイト代より高かったんですよ。で、全員が『え、これ、バイト辞めても平気?』みたいな感じになって。自分がわくわくできるもので得られたお金っていうのは一味も二味も違いましたね。お金をもらうということに対する意義であったり、自分たちがやったことがそのまま返ってくるという感覚をバイト以上に感じられた瞬間でした。僕、今でも全部バイト代で換算しちゃいます。服を買うにしても『ちょっと待って、これ、時給10時間分だな』とか。自分の価値観というものがこの頃に固まってるから、お金や時間の貴さはこの時期があったからこそ学べたと今でも思ってます」(渋谷) バンドはその後、着実にステップアップしていくが、メジャーデビュー時の苦い経験のせいで容易に他人のことが信用できず、初の日本武道館公演を迎えたときもごく少数のスタッフでバンドを切り盛りしていたという。 「俺、今でもそうなんですけど、自分たちのどれかひとつでもいいから、目を見て『好きだ』って言ってくれる人じゃないと嫌で。人が好きだから一緒に働きたいとか、人はそんなに好きじゃないけど曲が大好き、でも何でもいいんですけど、そうじゃないと信頼はしないですね。最初にメジャーデビューしたときは好きじゃない人と一緒にやったからああなったんだなって」(柳沢)