青森山田が活かした「1年前の教訓」。冷静に失点ゼロを徹底、PK戦で矢板中央を振り切る
[7.30 総体3回戦 青森山田高 0-0(PK5-4)矢板中央高 JヴィレッジP2] 【写真】あのちゃんの日本代表ウェア姿などに反響「削除しないで」「可愛い」「時代を先取り」 青森山田が「昨年の教訓」を活かして8強入り――。30日、令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技(福島)3回戦が行われ、青森山田高(青森)が3年ぶりの準々決勝進出を決めた。矢板中央高(栃木)と対戦した青森山田は0-0で突入したPK戦を5-4で勝利。31日の準々決勝で帝京長岡高(新潟)と戦う。 「みんながハードワークして、去年の教訓を活かして、イケイケにならずにゼロでいけたっていうのが大きかったかなと思います」と青森山田・正木昌宣監督。70分間を無失点で終え、「かなり何か月も掛けて練習をやってきていた」というPK戦で矢板中央を上回った。 青森山田は今大会3試合目。CB伊藤柊(3年)、MF長谷川滉亮(2年)と主力2選手を欠く中での3回戦だ。GK松田駿(2年)、DF小沼蒼珠主将(3年、U-17日本高校選抜候補)、矢部翼(3年)、山口元幹(3年)、福井史弥(2年)、MF川口遼己(3年)、谷川勇獅(3年、23年U-17日本高校選抜候補)、別府育真(3年)、大沢悠真(3年)、FW石川大也(3年)、浅野瑠唯(3年)の11人で試合をスタートした。 一方、シード校で2回戦から登場の矢板中央は、3年連続の8強入りを懸けた戦い。GK藤間広希(3年、U-17日本高校選抜候補)、DF岡部秀裕(3年)、佐藤快風主将(3年)、小倉煌平(3年)、MF井内哲心(3年)、中島漣音(3年)、田中晴喜(3年)、外山瑛人(3年)、平野巧(2年)、渡部嶺斗(3年)、FW山下魁心(3年)の先発11人で昨年度の選手権、プレミアリーグ王者に挑戦した。 互いに強固な守りを特長とする両校の戦いは、“予想通り”堅いゲームとなった。注目の立ち上がりはまず矢板中央に勢い。PAまで攻め込むが、青森山田もすぐに押し返し、速攻、セットプレーで相手ゴールに迫る。 自然と浮き球での競り合いが増加。互いにボールを落とさず、前へ飛ばし合う。また強度の高いセカンドボールの攻防。ともにボールへの執着心が強く、球際で絶対に引かない。そのため、青森山田の2選手に鼻血も。試合を通して激しいバトルが続いた。 藤間の高精度キックや、攻守で存在感を放った小倉の持ち運びも交えて前進する矢板中央は前半26分、切り札の155cmドリブラー、FW堀内凰希(3年)を投入。対する青森山田は川口の質の高いキックや小沼のロングスローで相手にプレッシャーをかける。 後半開始からDF永井健慎(2年)を加えた矢板中央は後半8分、相手FKのカウンターから堀内が左サイドをドリブル突破。外山のスルーパスから山下が左足シュートを枠へ飛ばす。これは青森山田GK松田が冷静に対応。青森山田は直後の相手CKから岡部に放たれたシュートをCB山口がブロックし、さらに相手DF佐藤の折り返しから堀内に押し込まれそうになった一撃も、ゴールカバーしたMF谷川が身体を投げ出して足に当てる。 正木監督が「やっぱりあれが、ウチらしいのかなっていう気がする」と評した伝統の“ゴールを隠す”守備。また、矢部が空中戦で再三高さを発揮するなど堅い守りを継続する。だが、小沼のインターセプトからの速攻やセットプレーからゴールへ迫るも相手の“闘将”DF佐藤や空中戦で強さを発揮する田中、そして本来攻撃的なMF外山も守備意識高く守るなど立ちはだかった矢板中央の赤いユニフォーム。小沼は「(矢板中央伝統の)“赤い壁”ってほんとにあるんだなって。ほんとにそれぐらい分厚くて、こじ開けるのが大変でした」と振り返るが、昨年の教訓を持つチームは慌てなかった。 青森山田は前回大会3回戦で優勝校・明秀日立高(茨城)に0-1で敗戦。攻め続けながらもゴールを破れず、後半35+3分に一瞬の隙を突かれてカウンターから失点している。1年前、その姿をベンチから見ていた小沼は、「クーリングブレイクのベンチだとか、ハーフタイムの時とか、『去年と全く同じ状況だぞ』って常に伝えていました。(個人的には)オフ(・ザ・ボール)の徹底とか、やっぱ攻め急いでる時に自分は常に冷静でいました」と説明。1年前のことを全員で共有し続け、絶対に失点しないことを徹底した。 青森山田は後半14分にMF藤田比呂(3年)を右サイドに送り出し、試合終盤にはDF中島斗武(3年)とMF三浦陽(3年)、MF小山田蓮(2年)を投入。矢板中央も後半19分にFW朴大温(3年)をピッチへ送り出し、堀内のドリブルシュートや今年力を入れて取り組んできたという攻撃の崩しで先制点を狙う。 後半35+2分には青森山田が連続シュートも矢板中央の岡部、佐藤がブロック。矢板中央の高橋健二監督は「もうだいぶ、“矢板らしさ”は出したけど……」と評価した一方、「ほんとに堅いゲームだったけど、(シュート数は5-3だっただけに)ゲーム中に1点欲しかった」と残念がった。 試合は70分間で決着がつかず、PK戦へ突入。両校の選手ともに自分の間合いで時間を掛けてキックし、1人目から成功させていく。青森山田は相手GKに触られるシーンもあったが、力強いシュートで4本のゴール。迎えた5人目、矢板中央は中盤守備などで奮闘した田中が左足で狙うが、これを青森山田GK松田が弾き出して見せる。直後に青森山田MF大沢が右足で決めて決着。青森山田が激闘を制し、昨年超えを果たした。 今年はプレミアリーグで3連敗を喫したほか、ホーム戦は6試合目でようやく初勝利と苦しいシーズンに。だが、その中でチームは少しずつ勝負強さを身に着けてきた。正木監督は「全体的にプレミアでの教訓っていうのは本当に彼らにも強烈に残っていますし、やっぱり去年の悔しさっていうのを知ってるメンバーもいて、その子たちが、きちっと試合前からもそうですし、試合中も『去年と今、流れ一緒だぞ』っていう声も出てたし。だから、後ろはしっかりゼロで行こうっていうことで。やっぱりそこは成長してるなと思います」と目を細めた。 ただし、「まだまだ何も成し遂げているわけではないので、もっと強度上げて、集中力を持ってやりたいです」と指揮官。勝ち切ったことを収穫に挙げた小沼も「次に繋げたい」。目標の日本一へ、一つ一つ白星を重ねながら、より強いチームになる。