舗装の下から線路が!56年ぶりに出現した「都電の遺構」 東京都内には鉄道の遺跡が数多く眠っている
■都電の線路は東京中に眠っている 昭和40年代頃から自動車が急速に普及し道路の渋滞が激しくなった。当時は車優先の社会で、都電は次々と廃止に追い込まれた。通常なら路線が廃止されれば、レールや枕木は撤去されるが、併用軌道のレールは道路面と同じ高さのため、停留場などの突起物を撤去し、上からアスファルトで舗装すれば、すぐに道路として活用できた。工事費用も日数もかからないこの方法が、当時としてはべストだったのだろう。
筆者が所蔵する写真に、新宿駅前から出ていた12・13系統の廃止日の写真がある。最終電車が出発した数分後、作業員がツルハシで停留場の撤去を開始しており、翌日にはアスファルトで舗装されたようだ。それほど当時の道路状況は切迫していた。 現在も日比谷や日本橋、銀座など、かつて都電が走っていた道路下には、レールと敷石が眠っているはずだ。すべてのアスファルトを撤去して都電復活……。これは筆者の妄想と夢である。
渡部 史絵 :鉄道ジャーナリスト