舗装の下から線路が!56年ぶりに出現した「都電の遺構」 東京都内には鉄道の遺跡が数多く眠っている
確かに半世紀以上も前の線路の出現は、鉄道愛好者以外でも興味を引くことだろう。実際、公開日には鉄道愛好家以外の人も多く、係の人に熱心に質問する姿も見られた。 今後の予定では11月中旬より、都電の線路を含め橋の撤去を行う予定とのことで、まもなくこの遺構も姿を消すこととなる。 ただ、この遺構を研究や展示などの用途で使用する場合には、無償で譲渡するとしている。河川工事担当者は「すでに数団体から申し込みがあります」とのことだ。貴重な遺構だけにぜひとも保存されることを願っている。
■なぜ道路から遺構が見つかるのか さて今回の白鳥橋に出現した都電の遺構だが、2019年にお茶の水橋の補修工事でもレールと敷石が発見されている。それ以前にも日比谷付近のアスファルトが車のタイヤで擦られ、線路が顔を出したことがある。なぜこのように道路から遺構が見つかるのだろうか。それをひもとくカギは、廃止時の処置にあった。 都電のレールは、一見すると道路に埋まっているように思われるが、実際は普通の鉄道のように、枕木でレールが固定されている。敷設する際は、道路面に溝を掘り、砂利を引き、その上に枕木とレールを設置し、自動車や人が通行するように、レール周辺を御影石などの敷石で固定する仕組みだ。
ただ、近年ではコンクリート軌道ブロック(コンクリート製のプレート)に溝を掘り、締結金具で線路を固定する方法や、締結金具の代わりに樹脂を用いる方法などもある。 路面電車の線路は一般の線路と異なり、車輪のフランジ(出っ張り)が通過する溝を付けた溝付きレールを使用することが多いが、直線区間などでは、普通のレールも使用されていたようだ。今回発見されたレールは溝付きで、いかにも路面電車らしい。 線路の敷石は、通常線路に対して垂直に敷かれることが多いが、この白鳥橋とお茶の水橋では、長方形の敷石がレールに沿っている。なぜこのような仕様になったのか。当初は橋の上だからかと思っていたが、筆者が所蔵する写真では、新大橋を渡る36系統の敷石は垂直になっている。ということは、単に橋の上だからではなく、狭い橋などでの保線作業を容易にするためではないだろうか。レールの交換の際、垂直よりもレールに沿っているほうが、敷石を外しやすく場所も取らない。もちろん、これは推測にすぎない。