森保Jに2つしかなかった収穫
ペナルティーエリアの右横、角度がほとんどない位置から放たれたMF久保建英(ビジャレアル)の強烈な直接フリーキックが相手キーパーのファインセーブに阻まれる。後半アディショナルタイムの最後に訪れたチャンスが潰えた直後に、スコアレスドローを告げるホイッスルが鳴り響いた。 「壁の位置があまりよくなかったので、狙えるかなと蹴ってみたのですが。ゴールキーパーのナイスセーブだったかなと思います」 利き足の左足からニアサイドへ巻く弾道を蹴ったと振り返った久保に対して、カメルーン代表が作った壁は2枚。新型コロナウイルス検査で陽性判定が出て、試合前日にチームを離脱した守護神オナナに代わって先発していたオンドアは、久保をやや甘く見たようなポジションを取っていた。 国際Aマッチ出場8試合目にして、期待の19歳が待望の初ゴールを決めるか。オランダ・ユトレヒトのスタディオン・ハルヘンワールトで9日に行われた、日本代表の2020年初陣は時計の針が94分を回った直後に、途中出場していた久保を介して最も大きな盛り上がりを見せた。 日の丸を背負ったベストメンバーがピッチに立つのは、昨年11月のキルギス代表とのカタールワールドカップ・アジア2次予選までさかのぼる。しかし、新型コロナウイルスの影響で今年に入って活動停止を余儀なくされていた、森保ジャパンが手にした収穫は残念ながら2つしかなかった。 ひとつは初めて対戦するアフリカ勢に負けなかったことと、もうひとつは前半と後半とで異なる戦い方を使い分けたことになるだろうか。開始早々から激しいプレスをかけ続けるもボールを奪えず、攻撃面で好連係も見られなかった前半を終えて、森保一監督はシステムの変更を決断する。
左サイドバックの安西幸輝(ポルティモネンセ)に代えて、後半開始から快足が武器の右サイドアタッカー伊東純也(ヘンク)を投入。同時にシステムを慣れ親しんだ[4-2-3-1]から、ベストメンバーでは昨年6月の国際親善試合で試して以来となる[3-4-2-1]へと変えた。 「昨日も含めて、準備の段階で4バックだけでなく3バックも練習していました。3バックを試さない選択肢もありましたけど、戦術に厚みをもたらすためにも必要だと選手たちも前向きにトライしてくれていたので、試合の流れを見てトライしようと決断しました」 試合後のオンライン会見で、森保監督がシステム変更の理由を説明する。最終ラインは左から東京五輪世代の冨安健洋(ボローニャ)、キャプテンの吉田麻也(サンプドリア)、そして右サイドバックとして先発していた酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)と初めての組み合わせになった。 ウイングバックは左に原口元気(ハノーファー96)が、右には伊東が入る。ボランチは柴崎岳(レガネス)と中山雄太(ズヴォレ)で変わらず、1トップの大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)の背後に南野拓実(リバプール)と堂安律(アルミニア・ビーレフェルト)がインサイドハーフで並んだ。 試合後に大迫が残した言葉に、前後半でシステムを変えた理由が凝縮されている。 「前半は守備のところでなかなかはまらず、ボールを追うことに力を使ってしまった印象です。チームにとって守備は欠かせないことですけど、取った後になかなか前へ出ていけなかった」