トマトを手で潰してTV局からストップも!?平野レミさんに聞く、料理を楽しくする考え方
学校の算数より“料理の算数”が大好き
小竹:お父様はどういう方でしたか? 平野:とにかくおもしろくて、何でも知ってるから色んなことを教えてくれたわね。明るくておもしろい人だから、家にお客さんもいっぱい来ててすごく楽しかったの。学校よりも家が楽しかったから、いつも駆け足で帰って来てたのよ。 小竹:いつも何人くらいいらっしゃったのですか? 平野:うちの父は詩人だったから、詩の会のときは30人くらい来てたかな。母が料理上手だったから料理を作って、私も手伝ってたの。 小竹:30人もいると料理もたくさん必要ですよね。 平野:そう。だから、私も食材の切り方とかを母に教わりながら手伝ったりして、あれはすごく料理の勉強になったと思う。 小竹:たくさん人がいる中でも、ちゃんとお母様が教えてくれたのですね。 平野:そうそう。あと、私が家庭菜園からトマトやピーマンを採ってきて、台所にあったうどんとチーズと合体させてグラタンにしたりとかしてたのよね。 小竹:すごいですね。 平野:学校の算数だと、トマトとピーマンとうどんとチーズを足すと、1+1+1+1で4になる。でも、料理の世界だと4ではなくて、おいしく作ろうという気持ちが出て、5にも6にも100にもなっちゃう。 小竹:うんうん。 平野:そこで私は料理の算数が好きになって、どんどん色んなものを考えてやり始めたの。学校の算数より料理の算数が大好きだったわね。 小竹:そっちのほうが生きていく上では大事かもしれませんね。 平野:そうそう。絶対に大事よ。 小竹:お母様も優しい方だったのですね。 平野:すごく優しい人。私がキッチンを散らかしても「今日も派手に散らかしたわね」って言うの。あのときに包丁を取り上げられたり怒られたりしてたら、私はこうはなってなかったと思う。お母さんが私を自由にさせてくれたことがとてもよかったと思う。
豚と調味料は「男と女の関係と同じ」
小竹:そのときは、レミさんはどういった料理を作っていたのですか? 平野:デタラメ料理よ(笑)。家に醤油とか砂糖、塩、みりんとかしかなかったから、色んなものに入れて作ってた。でも、きんぴらごぼうとかはうまく作れてたわね。 小竹:そうなんですね。 平野:新婚の頃、中華屋さんでトンポーローを食べたときに、箸で切れるくらい柔らかい角煮だったの。それを家で再現したくて、醤油とかみりんとかを入れて試行錯誤したんだけど、やればやるほど硬くなっちゃうの。 小竹:うんうん。 平野:普通は煮れば柔らかくなるのに硬くなるのが不思議で…。角煮用の豚肉をたくさん買って来ていろいろやって最後にわかったんだけど、まず豚をコトコト煮て柔らかくなったところに調味料を入れると、豚の中に入っていくのよ。 小竹:なるほど。 平野:そのときに思ったのは、豚が女性で調味料が男性だとすると、「好きだ好きだ」って最初から調味料をじゃんじゃん入れると、豚はまだそういう気持ちになっていないからカチカチに硬くなっちゃうの。 小竹:おもしろい(笑)。 平野:豚が柔らかな気持ちになってきたときに、調味料が「好きだよ」と言えば「私も好き」って豚も受け入れ態勢が取れるのよ。だから、豚と調味料は男と女の関係と同じよ。 小竹:算数だけではなく、料理は恋愛も学べるんですね(笑)。 平野:そうなの。料理本でもそうやって教えるといいと思うけどね。