メタボ健診は自殺行為! 日本に本物の肥満なんてほとんどいない【柴田博×和田秀樹④】
健康に長生きするには「コレステロールは下げる」のが常識。でも実はこれ、間違いなのです。実証研究に基づく対談は“目から鱗”の連続。日本人の生活を根本から変えてしまうかも。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。今回の対談者は医学博士・柴田博氏。第4回。 【写真】コレステロールが不足すると、認知症にも鬱病にもなりやすい【柴田博×和田秀樹⑤】
太めのほうが長生きしている
和田 2009年に「太めのほうが長生きしている」というデータが表に出ました。ところが、その前の年にメタボ健診が義務付けられたんです。 柴田 そうでしたね。 和田 そのデータは2005年くらいには出てるはずです。 柴田 出てますよ。僕らも「老人ホーム」のデータはもっと早く出してますからね。 和田 データがあっても、結局、逆をやってる。 柴田 いつでもそうですね。 和田 さらに2024年はメタボ健診で女性の腹囲を90㎝から77㎝まで減らせと、めちゃくちゃ言い出した。さすがに厚労省もまだ受け入れていませんが。 柴田 国際的な肥満学会はもっと上の数字を言ってるんです。なのに、無視して勝手に“日本人用”と言って基準を作ってる。それでいつも揉めてるんですよ。 和田 なるほど。 柴田 背景には「痩せ方教室」や今問題になっている「サプリメント」などがあるのかもしれませんね。アメリカではものすごい商売でしょ。それを日本もやろうって。 和田 僕はカンザスというアメリカの田舎町に住んでたんですが、娯楽も何もない所なので肉ばかり食べる。だから肥満の人が多いんです。本物の肥満って、本当にすごいんですよ。 柴田 そうでしょうね。 和田 だからアメリカが「肥満を何とかしよう」って言うのはわかるんです。でも日本はそうじゃない。本物の肥満なんて少ないわけだから。 柴田 肥満が少ないから基準をどんどん下げるわけですよ。「BMIの25以上を肥満にしよう」っていうのも2000年に決めている。国際的な勧告があっても変えようとしない。 和田 僕は1960年生まれですが、子供の頃はまだ「栄養失調が体に悪い」とされていました。 柴田 そうですね。 和田 でも今の40代以下や50代くらいの人は、小さい頃から「栄養の摂り過ぎはダメよ」って聞かされてきたと思います。 柴田 先程も話が出たけど小児肥満が問題視されましたからね。「痩せ」のほうが多かったのにそれは無視。で「食べるな」「痩せろ」と推奨したわけです。 和田 その世代がどんどん大人になり「痩せてるほど美しい」という強迫観念にかられている。女性だけじゃなく男性も、です。なんとかしないといけません。 柴田 本当にそうですね。 和田 誰だって年を取った時に、ただ長生きするだけじゃなく“健康長寿”になりたいわけでしょ。食べなきゃ健康にはなれないんですよ。 柴田 小金井の調査で「牛乳を飲んでる人は長生きする」って公表したら1975年から5年ぐらいで飲む人が増えたんです。ところが「牛乳は飲むな」っていう本が売れて、飲む人が大幅に減り、もう回復しませんね。20代の女性は1日に100㏄も摂っていません。 和田 牛乳がいかに体にいいものかが浸透していないんです。コロナ禍で給食がなくなった時も牛乳が余って酪農家が困りました。でも牛乳のよさが浸透していれば「学校で飲めないなら家で飲まなきゃ」って発想になるはずなんです。