<パリ同時テロ>欧州全域が脅威に テロ対策としての異文化との共生
11月13日、少なくとも8人のテロリストがパリを同時多発的に襲撃し、これによって死者129人、負傷者352人という被害が出ました。このテロ事件は、ヨーロッパで発生したものとしては、死者191人、負傷者2000人以上を出したスペインにおける列車爆破テロ事件(2004)に次ぐ規模です。翌14日、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出しました。これに対して、フランスのオランド大統領は「戦争行為」と表現し、全土に非常事態を宣言しました。 【図】アルカイダかISか 宗派は? 林立するイスラム過激派を分類 なぜこのタイミングで、しかもフランスで、ISはテロを引き起こしたのでしょうか。さらに、この事件はこれまでとどのように違い、どんな影響をもたらし得るのでしょうか。
シリアでの軍事活動への報復
ISは犯行声明のなかで、「空爆」に言及していました。また、生存者によると、100人以上の死者を出したコンサートホールで、テロリストは「シリアにおけるフランス軍の空爆」を理由にあげていたといいます。 フランス軍は9月27日から、シリアでIS空爆を行っています。米国や湾岸諸国によるシリアでのIS空爆は、2014年9月に開始。ISによる「建国宣言」の約3か月後でした。 約1年経って、フランスが有志連合によるシリアでのIS空爆に加わった背景には、 ・シリア内戦が長期化するなか、従来は「(自らが対立する)アサド政権を利する」と消極的だったIS空爆の必要に迫られたこと、 ・特に9月初旬から、アサド政権と友好的なロシアがシリアでの軍事活動の準備を始めたことで、この地域における力関係の変化に懸念を強めたこと、 ・大量の難民の流入により、難民問題の根本解決のため、ますますシリア内戦への関与を強める必要を感じ始めたこと、などが挙げられます。 しかし、この空爆開始が、ISの敵意を強めることにもなったとみられます。 11月16日、やはり7月からシリアで空爆を行っているトルコ政府は、パリでの同時テロ事件と同じ13日にIS関係者による大規模なテロがイスタンブールで計画されていたものの、これを未然に防いだと発表。詳細は不明ですが、これがパリの事件と関連があった場合、空爆参加国に対する同時多発的なテロ計画があったことになります。 ISは独自にシリア空爆を行っているロシアに対してもテロを予告していますが、フランスへの攻撃は有志連合の結束を乱すことが大きな目的とみられます。