病から復活し地域に恩返しする「地亀」 子ども食堂の運営に奮闘、陰にわが子への「罪滅ぼしの思い」も
白玉とぜんざいゼリーをカップに敷き、スポンジケーキ、パンナコッタを重ね、特大フルーツを最後に飾る。お年玉代わりの豪華な「お正月ケーキ」。浅田温幸さん(67)=京都府亀岡市=が、カフェ経営で培った華やかな盛り付けを手際よく仕上げていく。 学校の冬休みが明ける前日の6日。子ども食堂の特別企画で、ケーキに駄菓子の福引も付けて200円で提供した。喜ぶ子どもたちに「笑顔を見ると若返るね」。 亀岡市千代川町で、普段は毎週火曜に開いている。8年前に従業員に譲ったカフェレストラン「ポポクラブ」の敷地内で始めた「日替わり店長カフェ」が食堂に変わる。 亀岡市馬路町出身の「地亀」。高校、大学とアルバイトしていた亀岡駅前の喫茶店を20代半ばで引き継ぎ、千代川町への移転を経て、30年以上も大好きなもてなす仕事に打ち込んできた。 病気をきっかけに60歳で店を譲ったが、「元気になったら恩返しがしたい。子どもたちのためがいい」と、病院のベッドで天井を見つめながら思った。 そして、新型コロナウイルス禍で閉店した料理人の再チャレンジや、自分の店を持ちたい人を応援しようと、2021年6月に1日単位で出店できる同カフェをオープンした。 その1年半後、子ども食堂を始めた。寄付された食材も踏まえ、カレーライスやパスタ、豚汁などにサラダや小鉢、フルーツを付けた定食を考え、出している。 中学生までは200円。大人も500円で味わえるので、高齢者も集って語らう。助産師らを招いた子育て講座も開き、子どもを中心に輪が広がる「地域食堂」を目指す。 「息子たちへの罪滅ぼしでもある」。子ども食堂にもうひとつ込めた思いがあった。 ポポクラブでは、客に喜んでもらおうと、メニューのイラストを手描きし、「らくがき帳」を置いて書き込みに返事した。仕込みにも時間を割き、ほぼ休みなく働いた。わが子とろくに遊んでやれなかった後悔があった。 その息子の一人は食堂のボランティアを買って出た。当初目標の100回開催は目前だが、「知人や家族、企業の協力と協賛で続けられてきた。体力が続く限り頑張りたい」。柔和な表情を引き締めた。