中野島FCはジュニア年代から戦略的?岡本一輝コーチが考えるポケットの攻略と、それを小学生に伝えるむずかしさとは
―ポケットをとることに関して、指導する上でのポイントは何でしょうか? 岡本 どこから攻めるか、その選択肢を与える方法として、ポケットという言葉を使うと、引き出しがより増えると思います。 指導者として、間違ってはいけないのは、得点するのが目的であることです。ポケットに行けたらOKではありません。 また、ポケットではなく、中央から行けたのではないかという視点を持っておかないと、子供たちが、目的を見失います。中央は狭いので、サイドから攻めるしかないと、指導者の目には映ったとしても、選手目線で見ると、それほど狭くないというケースが、よくあります。 僕は、練習中にピッチの中に入って、選手と一緒にプレーするようにしています。選手と同じピッチに立つと、狭そうに見えても行けるな、ギャップができるなといったことが、よくわかります。 ゴールへの最短距離が空いているのに、サイドに展開するのは違うと思うので、その点は、強く意識させています。 ―逃げとして、サイドに展開するのも良くありません。 岡本 そうなんです。相手の立ち位置を見ながら、狭いと感じて、サイドに逃げると、相手にとって、こわくない選手になってしまいます。ですから、「まずは、中央から行けないか」という話をして、実際に仕掛けさせてみます。これは、重要なポイントだと思います。 ―ゴールへの最短距離を目指す過程において、ポケットを活用するわけですね。 岡本 まずは、ゴールに速く行くことを優先するべきです。その中で、ポケットという引き出しがあれば、ポケットを使ったサイドからの攻撃を見せることによって、中央の最短ルートに行きやすくなります。 ポケットは攻撃の選択肢を増やすための魔法の言葉ですが、選手への意識のさせ方や指導者の見方が間違っていると、ポケットが目的になってしまいます。ゴールにまっすぐに行けるのに、わざわざサイドから回るということになりかねません。(終) PROFILE 岡本一輝(おかもと・かずてる) 1996年1月28日生まれ、神奈川県出身。中野島FCから、川崎フロンターレのアカデミーを経て、桐蔭横浜大学に進んだ。大学卒業後、アンコールタイガーFC(カンボジア1部リーグ)でプレー。2019年から、中野島FCでコーチを務める。22年のプレミアリーグU-11チャンピオンシップでクラブ初となる全国大会優勝に導いた。日本サッカー協会公認A級コーチU-12と同U-15のライセンスを持つ
サッカークリニック編集部