ウクライナ危機で支援する日本のNGOら 必死の医療提供と、必要な周辺国への支援
「先ほども少し話しましたが、医療支援の緊急一時金を現地のNGO『100%LIFE』に送金しました。すると、その資金で医薬品を調達し、国内の避難所に届けた様子をすぐ写真や動画などで報告してくれる。活動をするうえで非常に安心感があります。これまでにウクライナとモルドバで、現地団体や企業、組織と連携し、医療、食料、日用品、家電機器などの支援を行い、その総額は約9500万円です。連携している組織は、ウクライナ国内では3つのNGO(「100%Life」「Right to Protection」「Vostok SOS」)、パリアニツィアという任意組織、ペット関連企業、モルドバではNGO(NCUM)とキシナウ市です」
長期化で体調を崩す人が増加
侵攻から3カ月が過ぎた現在、避難民にも変化が現れたという。現地からの報告によると、当初はウクライナ国外へと移動していた人たちが、情勢が安定しつつある首都キーウなど国内に戻る動きが増えてきたという。だが、モルドバでの医療のニーズは減っていない。避難が長期化し、体調を崩す人が増えているためだ。こうした中で見逃せないのが、隣国側の変化だと榛田さんは語る。 「モルドバ政府も財政難に陥りそうだとも聞きました。支援するモルドバ国民も疲弊しています。戦争で物価が上がり、避難民が増えたことで家賃相場も上がっている。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化している現在、モルドバやポーランドのような隣国を国際社会でどう支えていくかも考えなくてはいけないと思います」
JICA/久保達彦・広島大学大学院教授
「ウクライナ侵攻が始まった2日後、WHO(世界保健機関)本部から全世界の緊急医療の専門家に向けて『対応できる人は手を挙げてください』との呼びかけがメールで送付されました。手を挙げたところ、WHOがモルドバで緊急医療チームの本部を立ち上げるので、そこでコーディネーターをやってほしいという依頼がさらに来ました」 広島大学大学院医学研究科の久保達彦教授(公衆衛生学)はそう語る。久保さんはJICA(国際協力機構)の国際緊急援助隊医療チームに登録しており、5月下旬の取材時も第3次調査団としてモルドバに駐在中だった(5月28日帰国)。 JICAは開発途上国の支援が主な仕事だが、突然の災害や紛争などが起これば人道支援を行う。久保さんはまずJICAの第1次調査団の団長として3月20日、モルドバのキシナウに入り、WHOと連携して緊急医療チーム調整本部を立ち上げた。