ウクライナ危機で支援する日本のNGOら 必死の医療提供と、必要な周辺国への支援
JICAウクライナ・杉本聡・首席駐在員
日本の政府開発援助(ODA)を担うJICAは、基本的に国と国との二国間協定などがあったうえで、それに沿って活動する。そのため、相手国のニーズに基づいた活動となる。5月半ば、JICAはウクライナ政府に1億ドル(約130億円)の円借款を行ったが、これも同政府から要望のあった案件だ。 つまり、JICAの取り組みは小回りが利くNGOのような事業と異なり、国単位で取り組むものになる。その一つが、ウクライナの「戦後の復興」だ。戦火の最中でも、ウクライナ政府は復興に目を向け、各国の専門家の支援を取り付けているとJICAウクライナ・フィールドオフィスの杉本聡首席駐在員は言う。 「ガバナンス(統治機構)、インフラや都市の復興、保健、エネルギー、あるいはチョルノービリなど原発の扱い……。こうした様々な分野で専門家の知見を仰いで、復興委員会をつくりたいという話がウクライナからあります。であるなら、日本人の専門家もJICAを通じて貢献したい。そんな人選を20人弱リストアップして先日送ったところ、ウクライナからは早速反応がありました。すでに各セクターの担当部門では、今から情報収集を行いつつJICA内部で様々な検討を進め、和平合意がなされればすぐ動けるような体制を構築しています」
周辺国への支援も必要
逆に「戦闘の長期化」も想定している。この場合、ウクライナだけでなく、モルドバやポーランドなど、周辺国も支援が必要になってくると杉本さんも指摘する。 「費用負担や物資などの支援をしていかないと、ウクライナ周辺の地域ばかりに負担が寄せられてしまい、疲弊してしまう可能性があります。周辺国を支援することは、避難しているウクライナの人への支援にもなる。人道支援と言ったとき、NGOのようにすぐに現場に駆けつけて短期でケアをするという方法もあれば、国単位での長期の活動もある。そういうさまざまな視点で取り組んでいければいいと思いますね」
------ 岩崎大輔(いわさき・だいすけ) ジャーナリスト。1973年、静岡県生まれ。講談社「FRIDAY」記者。主な著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎 「異形の宰相」の蹉跌』『激闘 リングの覇者を目指して』『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』など。