「エミリー、パリへ行く」は幻想!? 世界中が憧れる「パリジェンヌ」の実態とは?
代表格はシャルロット・ゲンズブール
多彩な顔を持つパリジェンヌの代表格がシャルロット・ゲンズブールだ、とフェリシティ・チャップリンは言う。『Charlotte Gainsbourg, Transnational and Transmedia Stardom(原題訳:シャルロット・ゲンズブール、国もメディアも超越したスターダム)』という著作もあるフェリシティ・チャップリンは、「魅力的な人物です。有名人として生まれ、虚構と現実に対峙し、強さと脆さを併せ持ち、内気なのに挑発的で、控えめなのに過激さも持ち合わせます」とその魅力を語る。ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールの娘として生まれたシャルロット・ゲンズブールはニューヨーク生活も長く、アメリカでの知名度も高い。多感な性格はファッション分野でのコラボレーションに表れている。バレンシアガのニコラ・ジェスキエールからルイ・ヴィトン、そしてザラのような大衆ブランドまで、実に幅広いのだ。音楽分野ではベック、エール、ダフト・パンクらと楽曲を作り、映画では、夫のイヴァン・アタルやアニエス・ヴァルダの作品からラース・フォン・トリアーの異色作まで出演している。ただし、映画女優としてはマリオン・コティヤールの方がアメリカで有名かもしれない。2007年の『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でアカデミー主演女優賞を獲得し、ハリウッドを席巻した。ファッションアイコンであり、ヒット作に恵まれた女優はアメリカにおけるパリジェンヌ神話をさらに強固なものとした。
暮らしを楽しむパリジェンヌ
パリジェンヌのステレオタイプなイメージも評判も、この何十年間あまり変化していない。「ニューヨーカーにとって、パリジェンヌは茶髪のショートヘアに赤い口紅でいつもおしゃれな女性。自信に満ちて堂々と振る舞い、ストレスや疲労困憊とも無縁。暮らしを楽しむ術を知っている存在です」と言うのはニューヨーク出身、パリ在住のキャリー・アン・ジェームズだ。彼女は、オンラインでフランス語が学べる「French is Beautiful(フレンチ・イズ・ビューティフル)」を立ち上げ、エッセイやメディテーションを通じてパリの雰囲気を味わえる「パリ・レッスン」を提供している。 ニューヨーク出身のフランス系アメリカ人インフルエンサー、レアンヌ・アンサーも同意見だ。彼女はロマンティックすぎるほどのパリジェンヌ関連コンテンツを発信している。「インスタグラムで人気を得たいと思うのなら、やはりフランス生活の定番を投稿するのがいちばん。パリのカフェのテラスでくつろぐとか、パン屋でクロワッサンを買うとか。典型的なイメージを大事にしています」と冷静に分析している。インスタグラムで彼女はトレンチコートを着てパリの街を散歩したり、セーヌ川のほとりで友人とワインを楽しんだり、マリンシャツにジーンズ姿でアパルトマンの床に座り、タバコをくわえながら本を読んだりしている動画をソフトミュージックとともに流している。